ハイキューboys.

□欠色症/赤兎
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次に違和感があったのは、眠りから
覚めた、翌日の朝のベッドの上だった。


6時キッカリに、枕元に置いたスマホから
最近好きなバンドの音楽が鳴る。
あぁ、そろそろ起きなくちゃ...
そう思って手探りでアラームを止めた。

「......は?」

人間って本気で驚くと声出ないとか、
何となくそういうの聞いたことあったけど
ホントに出ないとは思わなかった。

俺のスマホって黒だっけ。
なんかめっちゃ手白い。
てか布団だって確か青だったはず。
あれ...この感じ、俺知ってるわ。

「白黒だ...」


俺が見る、全てに色が無かった。


昔のモノクロテレビみたいな。
そんな感じでしか辺りを見れない。
起き上がって、部屋の中を見渡しても
全部が濃淡のある白黒で見える。

でも何故か落ち着いていた。
あぁ...色が付いてないな。
ってそれだけしか特に思わなかった。

多分、パニックになってたんだと思う。

目を擦ってもそれは治らない。
痛みも痒みも乾きも何もないのに。
急に世界から色が無くなった。
自分の知らない世界に飛ばされた気分だ。

俺はしばらく小さく膝を抱えて
ベッドの上で黙りこくっていた。

「京治ー、朝ごはん!!」

1階から聞こえたその声にハッとして、
ようやくベッドから降りる。
白黒の制服に着替えて、白黒の階段を
降りて、白黒の母さんに朝の挨拶をする。

「学校遅れるわよー?」
「...ねぇ母さん」

ん?と母さんが振り返った。
でも俺は首を横に振って席に着く。
そして手を合わせて箸を持った。

「何でもない、いただきます」

色の無いご飯、色の無い目玉焼き。
色の無い味噌汁に色の無い温かいお茶。
テレビからは白黒のアナウンサーが朝の
ニュースを読んでいた。

...言えるわけないか。
母さんに言ったところで何て言われるか。
すごく心配されそうだし、めんどくさい。
あぁ、でも治らないのは困るな。
部活再開したらそれこそ大問題だな。


そんなどうしようもないことを考えながら
朝ごはんを食べて、歯を磨いて顔を洗って
髪を直してカバンを持って...家を出た。

外に出たら空が青くなかった。

まぁ、分かりきってたことじゃないか。
にしても自分は順応性のある奴だ。
普通は学校なんて行くモンじゃない。
それこそ飛び起きて病院行きだ。

「...俺も大概だな」

はぁっ、と大きく溜め息をついて俺は
耳をイヤホンで塞いだ。
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