ハイキューboys.

□心身症/及川
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どれくらいトイレにいたんだろう。
そろそろ戻らなきゃ監督に怒られるな。
先輩達にも謝らなくちゃいけないし。

俺はシンクに掴まってしゃがんでいた。
あれから何分経ったかは分からない。
ただ、もう吐くだけ吐いて最後には胃液
しか出なくなったから多分もう大丈夫だ。
...きっと胃、荒れてんだろうなぁ。

「はぁ......行くか」

喉の違和感を感じたので咳払いをしながら
ゆっくり立ち上がり、ドアを開ける。
すると何かにドンと当たった。

吐き終えたばかりで気力も体力もない俺は
成されるがままで尻餅をつきそうになる。
その手を誰かが掴んで引き寄せた。

「及川、大丈夫か?!」
「あ......岩ちゃん」

トイレを出てから気がついた。
外真っ暗、しかも岩ちゃん着替えてる。
もしかしてもう部活終わってた?
岩ちゃんが溜め息をつく。

「目赤いし声おかしい、呼吸も変」
「......あ、えと」

俺は思わず目を逸らした。
それに岩ちゃんは眉間にシワを寄せる。
そしてトイレの中の臭いを嗅いだ。
それが恥ずかしくて勝手に顔が赤くなる。

「もう吐き気ねぇのか」
「......う、ん」

あー、バレた。
岩ちゃんにだけは知られたくなかった。
1人で部活中にトイレで吐くとかダサイ。
ていうか心配させたくなかった。

俺が黙って俯いていると、岩ちゃんが
ガシガシと俺の頭を雑に撫でる。
それにたまらなく安心した。
ぽかんとしていると背中を向けられる。

「着替えろ、病院やってるかもしんねー」
「や...でもお金ないし」
「帰りに靴買うつもりだったから持ってる」

有無を言わさぬ言い草に、俺は苦笑した。

だがトイレを出ようと足を踏み出した時、
膝がガクンと落ちて倒れそうになる。

「......っわ」
「あっ、ぶね」

次の瞬間には腕が俺を包み込んでいた。
...あー、安心したら気抜けた。
てか足震えてしょうがないんだけど。
やば、今の俺すっごいダサイかも。

「ったく...歩けるか?」
「ごめん、大丈夫大丈夫」

岩ちゃんの腕が緩くなり、次は転ばぬよう
しっかりと足を踏み出す。
すると岩ちゃんがフッと笑った。

暗い校舎を歩きながら岩ちゃんは、水分
を飲ませようとしてくれたり、しきりに
俺の体調を心配してくれていたが、何が
あったかは聞かないでいてくれた。

部室で着替えている時も最寄りの個人病院
で今から行けるところを探し出してくれて
電話で予約をとってくれていた。


「ねぇ岩ちゃん、ごめんね」

学校を出て俺がそう呟くと、岩ちゃんは俺の
頭をいつもより少し軽く叩く。

「無理だけはすんな...ホント、頼むから」


俺はゴメンとまた呟いて笑った。




fin.
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