ハイキューboys.

□及川徹という人間/及岩
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アイツが吹っ切れて、安心した。
またいつもの様に笑い始めて、泣いて。
そんなことが、コイツにもあったんだ。


あぁ、及川徹は天才ではない。
この話を少しするか。

及川はバレーが大好きで、懸けてきた。
だけど神様は及川を愛さなかった。
及川はどこにでもいる、凡人だった。

だから、必死に努力して努力して努力して
北一でも青城でも主将になって。
ベストセッターを貰う様な選手になった。
それも全部、努力の証だ。

「及川って恵まれてるよな」
「やっぱ天才は違いますねー」

及川は前に1度だけ、こう呟いた。

『天才に近づきたくて努力はするけど、
天才ですねって、俺にありもしないことを
押し付けられるのは......正直しんどい』

アイツの手を見てみろ。
イケメンとか言う顔に不釣り合いな指を。
テーピングで固定されたその指は、
関節がゴツゴツしていて、先が固い。

アイツはそんな指が唯一嫌いらしい。

天才になりたがってるのに、指だけは
隠しきれないから、だから憎い。
そう言って自嘲していた。


そんな俺の今の心配事。

「及川さんってかっこいい」
「及川は天才だからむかつく」

極端な好意と敵意を向けられても、
寝ぼけたようにニコニコと笑うアイツを
どうしようか、壊れるんじゃないか。


及川徹は人から見れば沢山の面を持って
いるが、本当はただの泣き虫だ。




fin.
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