ordinary(long)

□08>亀裂
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授業が全部終わってリュックを背負う。
はぁ...今日も1日疲れた疲れた。

「優里香、シャーペンありがとね」
「あぁうんいいよ」

私が教室から出て部室に向かおうとした
時、後ろから肩をポンポンと叩かれる。
振り返ると立っていたのは一だった。

「シャーペン無くなったのか?」
「あ...いや、でも安いやつだったし...」

2人で廊下を歩きながら私が苦笑すると、
一は頭をがしがしとかきながら
大きい歩幅でズンズンと先を歩いていく。
私が慌てて小走りすると謝られた。

「悪ぃ、でも値段とかの問題じゃねぇべ」

うーん...と私はうつむいた。
確かにそれは分かってるんだけど。

「でも犯人探しがしたいんじゃないから...」

その言葉に一がプッと吹き出した。
さっきまで怒ってたのに次は笑うって。
何だかコロコロ忙しいやつだ。

「千尋らしいな」
「そうかな」

学校の外に出て、私達はまだあまり人の
いない部室棟の階段を上がった。
部室の鍵は主将と副主将が持っている。
しかし部室の鍵はもう開いていた。

「お、早かったな及川」
「えっ岩ちゃんズル、千尋と来たの?!」

私はアハハ...と苦笑いした。
いつもは女子に捕まって部室に来るの
遅いはずだけど、今日は逃げきれたのか。
部室に入ると一がカバンをロッカーに
放り込んで雑に制服を脱ぎ始める。

私はまだ女バレの部室が開いてないので
とりあえずはここで待つ必要がある。
私は暇つぶしにスマホを取り出した。

「あ、今日八雲ちゃん遅れるみたい」

あんまり学校でスマホを触らないから
気が付かなかったけど昼休みの時間帯に
八雲ちゃんからLINEが来ていたらしい。
...そっか、図書委員だったっけ。

「了解したよー」
「そういや国見も広報委員だから遅れるな」

えっ、と徹と私が声を上げた。
国見って委員会入ってたんだ...意外。
徹も考えてることは同じようだ。
というか主将のくせに知らなかったか。

「なんだ、2人とも知らなかったのかよ」
「逆に何で岩ちゃんが知ってるの...」

徹が着替え終えて、げんなりとすると
同時に部室のドアがゆっくり開いた。
そしておずおずと1年生が何人か入る。

「し、失礼しまーす...」
「おう1年生か、入れ入れ」

一がヒョイと声をかけると、まぁ大所帯。
6人の1年生が一気に中に入ってくる。
...最近の男子高校生って集団行動なんだ。
それが何だか不思議で笑えてきた。

「国見、今日委員会で...」

ロッカーに手をかけた金田一が思い出した
ように振り返って徹に口を開く。
徹も部室を出ようとドアにかけた手を
止めて、ニッコリと笑いかけた。

「岩ちゃんから聞いたよ、ありがと金田一」
「はっはい、いいえ!!」

ブッと部室にいた全員が吹き出す。
一だけが笑いをこらえながら代弁した。

「ハイかイイエか、どっちだよお前は」

すると金田一の頬がカッと赤くなって、
いそいそと制服を脱ぎ出したもんだから
私達は余計に面白くなって、笑いを堪える。

徹も笑いながら部室のドアを閉めた。
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