ordinary(long)

□06>落ちた強豪
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駆け寄ってくるスガ君は、前会った時と
そんなに変わっていなくて安心する。
厚着した私を見て眉を下げた。

「寒かったべー、ちゃんと帰れんのか?」
「ん、迎えに来てくれるから!!」

そう答えて、コート内に目線を向ける。
するともう1人、見慣れた顔が。
前と同じく、私の方をチラチラ見るくせに
目が合えば慌ててそらして頬を染めた。

「田中君もー、久しぶり!!」
「あっ、お...お久しぶりです千尋さん!!」

そんな田中君に、スガ君も苦笑する。
すると大地君が大きく手を叩いた。
全員の視線が一気に集まる。

「続けんぞ、戻れー」

その姿が、やっぱり徹とかぶった。
傍から見れば大地君は頼りがいがあって、
すごく主将気質なんだろうと思うけど
きっと徹も同じなんだろうなぁ...
いつも見てるから分からないってだけで。

「あとゲームだけだから、先生来るまで
ここで待っててもらってもいいか?」

大地君の言葉に、ハッと我に返った。
こくりと頷くと大地君もコートに戻る。
私は、ウィンドブレーカーとマフラーを
外して体育館の隅に腰を落とした。

暖房は付いているのだろうけど、それは
運動している選手達に合わせられている
もので、黙っている私には少し寒い。

「レフトー!!!!」
「縁下、ナイスカバー!!!!」

目の前で繰り広げられるゲームをボーッと
見て、私は寒さに小さく膝を抱いた。
...みんな一生懸命だなぁ。
当たり前か、頑張ってるのは青城だけ
じゃない...どこもバレーに懸けてるんだ。

そう思うと、胸がぐっと締め付けられる。
私は溜め息をついて少し頬を上げた。

その時、ガラリとドアが開く。
私が振り向くと、そこにはメガネをズラ
して息切れする男の人の姿があった。

「おっ...遅れてすみませんでしたーっ!!!!」

あー、と思った。
というか思ったより想像通りの人だった。
私が立ち上がってその人に駆け寄る。
そして深々と腰を折った。

「初めまして、青葉城西男子バレー部の
マネージャーを努めております如月です。
今朝はどうもありがとうございました」

頭を上げて、私は目を見張った。

「烏野高校男子バレー部顧問になりました
武田です、今回はお話頂けてホントに
嬉しかったです、ありがとうございます!!
今日は大雪なのに遠いところわざわざ...」

ブレないトークを繰り広げながら、私の
目の前で武田先生はギュンギュンと音を
立てながらお辞儀をしていた。

「せっ、先生ストップ...ス、ストップ!!」

アワアワおどおどしている私に助け舟を
出してくれたのは、さっきまでコート内
でゲームをしていた大地君だった。
焦って武田先生のお辞儀を制止する。

「先生っ、ビビッてますから!!」
「あ、ご...ごめん、そうだよね!!」

大地君がゴメンと苦笑した。
...どうやらこの先生のキャラらしい。
私も同じく苦笑して、少し頭を下げた。
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