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□04>復帰と好き
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「痛っ、痛いっ...痛いよ岩ちゃん!!!」
「うるせぇ、サボリ主将が」
「手厳しい!!!!!!」

片方が蹴りまくり、片方が悲鳴を上げる
何とも異様な光景を街行く人々が眺める。
私達はもう1度学校に戻ることにした。
監督にちゃんと報告するためだ。
私は一の頭を軽く叩く。

「ジャージ着て、外で私服の男を蹴らない」
「そうだよ岩ちゃん...俺、今は一般人!!」

一はムッとして、それから謝る。
ま、なかなか素直じゃないよねー...
市立病院、結構学校から遠いのに部活
終わりに来るなんて、やっぱ一だわ。

「お前2.3日様子見るんだべ?」
「うん、でも顔くらい出すけどねー」

スマホを片手にふてぶてしく答える徹は
さっきのビクビクしてた姿と正反対。
結果が良かったこともあると思うけど、
一が迎えに来たっていうことのもあるか。

「監督には上手く伝えてね千尋...」
「はいはい、分かってますよ」

学校への道すがら、部員と部活の様子や
徹が休部してた3週間のうちにあった
ことを一がダルそうに話していた。

私も休部してたはしてたけど、1週間だけ
だったし、徹にとってのその話題は
すごく嬉しいようでニコニコ笑って聞く。
出れなかったから、逆にしちゃいけない
話題かなって思ったんだけど...

「一はやっぱりすごいね」
「なんだよ急に...」

さすが一は徹のこと、分かってるなぁ。
こんな話をしたら喜ぶとか、こんな時に
声をかけたら徹の負担を減らせるとか。
それはコートで一緒に戦った2人だからこそ
生まれる信頼関係なんだろうな。

「みんな、すげー心配してたぞ」
「ほんとに俺いい後輩持ったなぁ」

感慨深そうな表情を浮かべる徹。
少し先には青城校舎が見えていた。
と、一が何やらスマホをいじりだす。

「なに岩ちゃん、彼女からメール?」
「いないの分かってて言うな、ボゲが」

げしっと蹴る音がして、一が顔を歪めた。
外で私服の男を蹴らないって思い出したか。
ふてくされる一に私は苦笑する。

「監督んとこ行ったら体育館行くぞ」
「えっ、いいけど...どしたの岩ちゃん」

それに対する応答は無く、私達は青城の
門前へたどり着き、中に入っていく。
私も徹も私服だから大丈夫かな...と思った
けど、ジャージを着た一がいるからと
警備員さんにも怒られずに済んだ。

階段を上がるが、私達の足音しかしない。
それが徹にはたまらなく嬉しいらしい。
笑顔になる徹に、私も一も不思議な顔をした。

「いや、誰もいない学校とか3週間ぶりで」
「あー...なるほどな」

私達は3人揃って職員室の前に並び、
ノックをしてから中に入る。
入った先には驚いた顔の監督が座っていた。
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