黒バスboys.

□お互い様でしょ/青黄
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「バスケしてる青峰っちかっこいいっス。
だから俺は憧れてバスケを始めた」
「モデルに言われても嬉しかねーっつの」

そう乱暴に言って目線を逸らす俺は、
お前の方がよっぽどかっこいいだろうが…
と内心毒づいてしまった。
が、黄瀬は健気に力説してくる。

「顔とかじゃなくて!!!」
「おい、そこまではっきり言うなよ」

俺は頭を抱えて深く溜め息をついた。

「バスケをしてる青峰っちは俺でも真似
出来ないくらいかっこよくて…
それは青峰っちにしか出せないかっこよさ
っていうか…真剣にバスケをしてる
その姿と姿勢がかっこよかったんスよ!!」

はぁ…と俺は変な返事をする。
バスケをお互い辞めた俺達だから、今なら
言える昔話ってやつか。
にしても…と俺はハンバーガーを飲み込む。

「俺にはお前のがかっこいいと思うけどな。
一応モデルみてーだし?」
「俺は…ずっと青峰っちに憧れてたっスよ」

ふざけ半分で返してみれば、向こうは
相変わらず真剣な面持ちだ。
黄瀬が真面目な話をするなんて珍しくて
こっちのペースも乱れる。
それに赤裸々に気持ちを伝えるなんざ
恥ずかしいことこの上ない。

「ったく…そういう話なら帰っぞ、俺」
「あ、ちょっと青峰っち!!」

この手の話は昔から少し苦手だ。
仲のいい奴と改まって話したりするのは。
相手が黄瀬だから余計に。

トレーを片付けて俺は店を出た。
黄瀬はと言うと俺を追いかけようと慌てて
立ち上がったはずみでぶつかった
女に絡まれていやがる。
助けに行こうか…と一瞬だけ思った。

「いや、いいか」

はぁ…と息を吐きながら体を伸ばす。
俺は、俺だって黄瀬をかっこいいと思う。

それは顔がいいとかスタイルがいいとか
そういった類のものではなく。
あいつが俺に憧れてたのを知っていたし
俺に追いつこうと必死で一人で練習
してたのも俺は知ってる。

そういうことがかっこいいと思った。

俺にはもう、憧れている人もいないし
追いつこうと思える人もいない。
だから少しだけ羨ましかった。

誰かを目標に出来るなんざかっこいい。
誰かを目指して自分の限界を超える
あいつの姿や涙はもっとかっこいい。


柄にも無くこんなことを考えた俺は
首をひねって大きく欠伸をした。








fin.
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