黒バスboys.

□君じゃなく/火黒
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ふっ、と黒子の涙と喚きが止まる。
色んなことを考えてるんだろう。

強くなりすぎ、影を必要としなかった光。
他に向けられた笑顔と自分に向けられる背。
チームの保険のような存在の自分。
自分の不安と共に、盛り上がる試合。
ついてこいと…必要だと言われなかった。


「ほんとに…火神君は…」

再び黒子の目から涙がこぼれる。
ただ、次は取り乱していない。
安心したような、そんな表情をしている。

「おい、どうしたんだよ今日は」
「分かりません…ただ止まらないんです。
君についてこいと言われ、嬉しい。
けど、それを…もしかしたら欲張りな僕は
他の誰かにも言って欲しかったのかも
しれません…嬉しいけど悲しいんです」

きっとそれは帝光時代のあいつらだ。
受け止めて欲しかった。
ただ中学生と未熟な彼らには出来なかった。
求めるものがお互いに違ったんだ。

黒子の嗚咽は次第に大きくなる。
それでも必死に言葉を探していた。
俺は黙って待ってやる。

「…大好きなバスケは....辞められないから」

そう言って笑った黒子の顔は酷かった。
涙で濡れた頬と真っ赤な瞼と鼻。
ただ、その笑みは嘘偽りのないもの。

「すいません、帰りましょうか」


俺は気づくと抱きしめていた。

「あの....火神君?」
「ブサイクな面して帰るの恥ずいっつの。
さっさと泣いてそれで終いだ」

俺はよく言えたもんだ、と感心する。
恥ずかしいのは現在進行形で今だ。
何が悲しくて脇道で男同士で抱きあわねば
ならないのだ、と。
ただ俺の左腕はしっかり黒子を抱きしめ
右手はあやすように背中を叩いている。

「一人で頑張ったな」

と、すっぽり収まった黒子の肩がまた
小刻みに震えると、聞いたことの
ない声で大泣きし始めた。


俺が光でお前が影なら、痛みも悲しみも
全部半分貰ってやるよ。

冷たい風が2人を吹く。






fin.
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