黒バスboys.

□君じゃなく/火黒
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「逆に、火神君は僕とバスケすることに
飽きたり嫌だなとは思わないんですか?」
「はっ…?!」

俺は予想外の質問に眉間にシワを寄せ、
思わず大きな声を出した。

「僕のバスケは、君や青峰君のような
光が存在しないと続けていけません。
光が影を拒絶すれば僕のコートでの
存在価値は無に等しくなる」

コートで必要とされなくなる…
その言葉は黒子の口から直接出たもので
俺は気温の低さとは別にぞっとする。

想像してみただけでそれは恐ろしい。
だがそれを黒子は経験済みなのだ。
かつて、コートにいる価値がなくなった。
光が影を拒絶した。
光から見放された影はもう、
影でいることさえ出来なくなった。

「君は強いです、僕がいなくても君は…
一人で試合をやっていけます。
僕のバスケが君の足枷になっているかも
しれない…最近はそう思うんです」

“だから、選択肢は君にある”

俺はその言葉に妙な突っかかりを覚えた。
影が光を必要として、光は影を必要と
しないのは何かがおかしいはずだ。
それこそ均衡が崩れている。
それに、影を捨てた結果が青峰なんじゃ
ねーのと俺は目線を落として思った。

選択肢も何も…それは黒子のコートでの
存在価値を俺に決めろと言っている
ようなものじゃねーかよ。

「強ければ、もう僕のパスは必要ない。
僕がいなくても試合は進むんです。
だから君がもう僕を必要としなくていい
と思ったら……遠慮なく言って下さい」

そう言った黒子の口元は自嘲ともとれる
笑みを浮かべていて俺は寒気がした。
それより気になったのは、黒子が
“遠慮なく言って下さい”と言う前に、
他の言葉を言おうとし、口をつぐんだ事。

俺は何を言えばいいか分からず、この
心のもやもやをどうやって伝えたらいいか
分からず、しばらく黙っていた。

と、黒子に視線を戻した俺は息を飲む。

「おい…なんで泣いてんだよ」
「え?」

それはあまりにも自然な涙だった。
表情はそのまま、ただ目から涙が出てる。
本人も気づかない程、申し訳程度に。
俺は人通りの少ない道だとしても、焦り
慌ててカバンからティッシュを出す。

「火神君って…意外としっかりしてますね」
「憎まれ口叩いてる暇あったら拭け!!」

黒子は俺からポケットティッシュを
受け取ると頬まで流れる涙を拭く。
内心、俺は苛立った。
泣くってことは…さっきの言葉はただの
強がりで嘘なんじゃねーの。

「あのさ、さっきのって…本心なわけ?
俺はバスケに必要、不必要とかそういうの
ないと思ってんだけど」

黒子の顔が下を向く。
そしてぼそっと小さな声で呟いた。

「どうして火神君まで…」

俺がどうした?とうつむく黒子の肩に手を
置くと、勢いよく黒子が顔をあげた。

「どうしてっ…青峰君、と同じことを…!!」

泣いていた。
なんて言葉じゃ表しきれない。
俺は思わず黒子に触れた手を引いた。
怒りや悲しみ、全てがぐちゃぐちゃに
なったような顔をしていた。

「お、おい…黒子」
「青峰君もそう言ってくれました…けど、
いつか必ず、僕は必要じゃなくなるっ。
強くなればなるほど…っ、僕は不適合な
試合が、少なからず出てくるんです。
僕の存在価値は…なくなります、いつか」

訳が分からなくなっている。
というかトラウマに捕らわれている。
昔のこいつは本当に苦労していたとは、
知っていたけど…

ただ、いつも表情を変えずに前向きに
練習する奴の涙と叫びは怖い。
心の奥からの正直な気持ちだからだ。

「…黒子」

俺は無意識に震えていた手をぎゅっと
握って再び黒子の肩に置いた。

「俺はお前を捨てないし置いてもいかない。
俺は一人じゃ強くなれねーよ。
けど俺は日本一まで、進んでいくぜ。
だからちゃんとついてこい、最後まで」
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