黒バスboys.

□繋ぐもの/青黒
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外は雪が降っていて車が大通りを行き交う。
携帯だけを握り締めて飛び出した僕は
必死に走りながら携帯を操作した。
しばらくコールが鳴る。

「あっ……青峰君、今どこですか!!」
「…家だけど」

青峰君の声に少しだけ安心する。
何故なら僕の足は勝手に青峰君の住む
アパートへと向かっていたからだ。
それに変な気をおこしていたら…とガラでも
ない事を考えていたから余計に安心する。

「青峰君っ、今…向かってますからっ!!」

雪が足をとって走りにくく、冷たい空気
が喉に入り込んで息をすると苦しい。
慌てていてもマフラーはするべきだった。
と、青峰君がぽつりと震えた声で呟く。


「テツ、俺…もう駄目かもしんねぇ」


頭をハンマーで叩かれた様な衝撃だった。
その言葉と震えた声は中学時代、雨の中
言われた“もうお前のパスをどうやって
とればいいのかも忘れちまった”という
あの記憶を呼び覚ます。

僕は思わず走る足を止め呼吸も止めた。

耳元からはまたあの機械音。
回らない頭でかろうじて通話を切る。

「そんな…青峰君…」

僕はまたふらふらと足を動かす。
青峰君は僕を何度も助けてくれた。
だから今度は僕が青峰君を助ける番だ。
携帯を握り締めてまた走り出す。

何分走っただろうか、いつもならバス
で行くはずのアパートに辿り着いた。
肩で息をしながら階段を登る。

3階の…302号室。
こんこんとノックをして小さな声で
息絶え絶えに黒子です…と呟く。
と、ドアが開いて青峰君が顔を出した。
中は電気がついておらず真っ暗。

「…テツ、お前…走ってきたのか?」
「入っても…いい、ですか」

倒れ込むように玄関に入ると青峰君は
電気をつけて僕をリビングに誘導する。
と、僕は視線を青峰君の肘にやる。

テーピングと包帯でぐるぐる巻きだ。
おまけに目元は少しだけ赤い。
声もいつもより枯れている。
僕は見ないふりをして彼の入れてくれる
コーヒーをソファに座って待った。

「寒かったのによく走ってきたなお前」
「君が焦らせることを言うからです」

ははっ、と笑い飛ばす青峰君が無理をして
笑っているのは見え見えなわけで。
僕は目の前に置かれたコーヒーを一口
飲むと青峰君の目を見た。

「肘、打ったって聞きました」
「どっから聞いたんだよ、早いな」

電話越しでは本音を漏らしたくせに、
いざ目の前にすると強がる青峰君。
僕が目を逸らさずに見つめ続けていると
青峰君は溜め息をついた。

「…もうとっくにやばいんだとよ、俺の肘」

僕は何も言わずに視線を外す。
青峰君の自嘲ともとれる苦しそうな笑顔
に胸がきりきりと締め付けられた。
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