黒バスshort.

□夏といえば合宿だ!!2/all
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「さて、ろうそくはあったが困ったね」
「懐中電灯はもう無いんですか?」
「俺が探してくるのだよ」

暗闇の中にぽつんと立つろうそく。
私達はそれを囲むように座っていた。
別荘の扉が開く音と、外の暴風雨の音が
誰かの帰宅を知らせる。

停電して、他の別荘の様子やろうそくの
有無の確認をするために大輝と涼太が
かっぱを着て2つだけあった懐中電灯を
持ち、雨の中外に行っていたのだ。
私は慌ててタオルを持って迎えに行く。

「…っやべぇな、台風レベルだぜアレ」
「涼太も大輝も風邪引くから早く拭いて」

短時間外に出ていただけなのに髪の毛は
ぼさぼさ、全身ぐしょ濡れだ。
タオルで頭を乱暴に拭いてリビングに
全員が集まると真太郎が見つけてきたのか
もう1本懐中電灯があった。

「どうだったの、峰ちんと黄瀬ちん」
「意外と落ち着いてて安心したっスよ!!
ろうそくと懐中電灯もあったみたいで、
することがないから寝るって言ってたっス」

さすが男子は強いわ…と私は苦笑する。
さつきはと言うとずっと半べそをかいていて
やっと泣きやんだところだ。
さて、どうするかな…と赤司君が思案して
いると大輝が携帯を操作しながら、
あっ…と何かを思い出す素振りをした。

「どうした、大輝」
「あ、いや…なんでもねぇ」

私は置いてあった懐中電灯を1つだけ
借りると立ち上がる。
さつきが不安そうな目で見てきた。

「もー、トイレ行くだけだから」
「私もついてく!!」

涙目で言われれば私も苦笑して承諾する。
トイレなんてリビングを出てすぐなのに
よっぽど暗闇が駄目らしい。
私なんかよりみんなといた方がだいぶ
気は楽だと思うんだけどなぁ…
さつきも自分の分の懐中電灯を持つ。

「暗いですから足元に気をつけて下さいね」
「はいはーい」

私にぴったりくっ付いて歩くさつきを
見ながら、男子はこれくらいか弱い女の子
の方が好きなんだろうか…とか思う。
それに比べて停電しても図太い精神を
持ってる私は、何だか男らしい。

「じゃ、ちょっと待ってて?」
「早くしてね…」

今にも泣き出しそうなさつきを置いて
トイレに入ると、ダイレクトに暴風雨の
音がしてさすがに腰が引けた。
うーん…これはちょっと怖いかも。

っていうか、まさかこんなことになるとは
思わなかった、全日晴れなはずだったのに。
それに停電するなら昼がよかったな…
まぁなんかお決まりな感じだよね。

でも、今回は執事さんが間違ったおかげで
キセキの世代のみんなと同じ別荘になれた
けど、私とさつきだけだったらホントに
どうなってたか…よかった…

「っと…あれ、えっ、何これ?」

立ち上がり、かけたはずの鍵を開けようと
すると何故だか鍵が全く回らない。
変な冷や汗が背中を伝った。
慌てて扉を叩きながらさつきを呼ぶ。

「鍵開かないんだけど、さつき!!!」
「えっ、ちょっと待って誰か呼んでくる!!」

えっ、お、置いてっちゃうの?!
私は言い知れぬ不安にさいなまされながら
大きな溜め息をひとつついた。
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