黒バスshort.

□きっと大丈夫/降旗
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「あーあ、雨降ってんねー」
「早く帰っちゃおうよ」

日直の仕事が終わって、私はクラスの
友達3人と一緒に帰っていた。
ふと、花壇の前に誰かが傘もささず
ただつっ立っているのに気づく。
…あれ、もしかして降旗君?

「恵美、麻里子、美咲、先帰ってて!」
「え…あーうん分かったー」

私は走って花壇の前まで行く。
やっぱり降旗君だった…
でも様子がおかしい、俯いたまま。
それに今って部活の時間じゃ?
私は黙って傘に降旗君を入れてあげた。

「降旗君…風邪、ひいちゃうよ?」
「八重樫…俺、なんかで1番になる
とか、やっぱ無理かもしんないわ」

そう答える降旗君の言葉にいつもの覇気
はなく、私は背中に手を添えた。
冷たい…どれだけ外にいたんだろう。
いつもの元気な降旗君じゃない。

何かで1番になったら付き合ってあげる、
そう言ったのは私だった。
それで降旗君はバスケ部に入って、
一生懸命頑張ってたのを私は知ってる。

「俺…頑張っても試合に出れなくて。
なんか嫌になっちゃってさ、部活にも
自分にもいらいらして…最低だよ俺」

俯いた降旗君から涙がこぼれた。
私は慌ててカバンからハンカチを探す。
降旗君はぼろぼろと涙をこぼし始めた。
辛い、悔しい、そう何度もつぶやきながら。
私は傘を地面に落とした。


「降旗君、きっと大丈夫だよ」


そう言って私は彼を抱きしめた。
冷たい身体を力強く一方的に抱きしめる。
降旗君の涙は雨が洗い流していく。

「大丈夫、私知ってるよ、頑張ってるの。
だから、もう泣かないで降旗君」

耳元で降旗君の嗚咽が聞こえる。
…ほんとに辛いんだ。
でも、私は信じてる降旗君のこと。
いつも一生懸命で笑顔が絶えない頑張り屋
の君なら苦難にだって勝てるって。
だから大丈夫なんだって。

「早く1番になって、もう1回私に告白
しにきてね…絶対…約束だよ」

微かに肩に乗る降旗君がうなづいた。
そして、私の腕の中から抜ける。
初めて見る表情は心なしか明るかった。

「ありがとう八重樫、風邪引くなよ」

そう言って降旗君が走って体育館へと
戻っていくのを私はただ見ていた。
そして地面に落ちた傘を拾う。
何となく雨足が弱まった気がした。
きっと、虹が見える。
私はそう思って笑顔で学校を出た。






fin.

(降旗君、風邪ひいてないかな)
(八重樫、風邪引いてないといいけど…)
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