ハイキューboys.

□2秒間/影山
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俺は誰もいない屋上のドアを開ける。
そして、ポケットに手を突っ込んだ。

まだ昼時には少し早い3時間目。
俺のクラスは今、英語の授業のはずだ。
普段こうしてサボることは滅多にないが、
今日は息苦しささえも感じた。

今頃、影山飛雄は保健室で寝ている
ことになっているはずだ。
...日向がちゃんと伝えていれば。

少し冷たい風が頬を掠めた。
落下防止の為に立てられているフェンス
に近づいて、軽く手を触れる。

『15mの高さから落下すれば、地面に
つくまでには2秒間しかかかりません』

物理の先生が言っていた言葉がよぎった。
俺はフェンスの向こう側を覗き込んで
思わずハッと息を飲む。

...落ちたら痛いのかな。
落ちるってどんなだろう。
どんな気持ちになるんだろう。

俺はたったの2秒に、何を思うんだろう。

家族のことか?
それともバレーのこと?
国見と金田一のことかも。
あぁ、でもやっぱ日向のことかな。

俺はフェンスから手を離す。
ガシャッと金属の音がした。

...俺がもし飛び降り自殺するとしたら、
それはきっと及川さんに追いつけなかった
時なんだろうなと、俺は思ってる。

「なら、最期に思うのは及川さんのことか」

俺は大きく溜め息をついた。
その息が小刻みに震える。
学ランのポケットに再び手を突っ込むと、
屋上に背を向けドアノブを引いた。


フェンスの向こう側を覗き込んだ時、
微かに目眩にも似た感覚に陥った。
一瞬、このまま下に落ちてしまおうか...
とかそんなことを思った。

が、俺はフェンスに背を向けた。

飛び降りられなかったのは、フェンス
が高くて乗り越えられなかったからだ。
俺はいつでも飛び降りられた。

そんな言い訳はあまりにも滑稽で。
反吐が出そうなくらいだ。

及川さんのことを思い飛び降りたとして。
それを知った及川さんは、果たして
こんな俺に対して何を思うんだろうか。

そんなことを考えると、急に怖くなり
思わず立っている足がすくんだ。

...なんてことはきっと思い違いだ。



fin.
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