ハイキューboys.

□心身症/及川
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飛雄が俺の後輩になってから、やっと
2ヶ月が経って6月も下旬に差し掛かって。


あぁ、もう嫌だなぁ。

今日の部活はトスミスしまくり...しかも
先輩と衝突事故起こすし、ゲームでは
今日も飛雄と交代させられた。
もうホント最近何をやってもダメだ。

部活中、廊下を歩く足が重い。
何となく朝から体調が悪くて、監督から
体育館を出て気分を整えるよう言われた。
フラフラと校内を歩いているとサッカー部
の階段ダッシュと遭遇して踵を返す。

「及川ー!!」
「ん」

振り返るとクラスで親しくしている男子。
よぉと手を上げて俺に近づいてきた。
俺も苦笑しながら名前を呼んだ。

「お前、顔色悪くね?」
「ちょっと体調悪くてさ...」

ソイツは心配したような表情を浮かべて、
俺の背中を少しだけさする動作をする。
一瞬気分が和らいだ感じがしたが、しばらく
そうしていると逆に苦しくなった。

「ご、ごめっ...俺ちょっとトイレ行くわ...」
「おい大丈夫かよ及川」

半ば強引に友達の手を振り払ってトイレが
ある方向へ走ったが、すごく気持ち悪い。
走ったり歩いたり止まったりを繰り返して
そう遠くはないトイレのドアを開けた。

「うっ...気持ち悪っ」

思わず水道シンクに寄りかかると、自分が
酷い顔をしているのにふと気がつく。
...あ、確かに顔色悪いどころじゃないわ。

胸の奥につっかえてる気がするし、多分
吐いたら楽になるけど吐けない。
あー...苦しい、吐けないのが1番ツライ。
俺はズルズルとその場にしゃがみこんだ。


あーもうホント嫌だ。

俺、天才相手に何やってんだろ。
今更どんなに努力したって無駄だろ...
昔は楽しくバレーがしたいって思ってた。
でも飛雄みたいな天才と、俺みたいな
凡人がいる時点でフェアじゃない。

遥か前には追いつけない牛島がいるし、
すぐ後ろからは飛雄が追ってくるし。
でも努力じゃどうにも出来ない。

もうバレーしんどいよ。
辞めちゃいたいよ。


「......っう」

胸の奥が急に熱くなり苦しくなる。
俺は慌てて立ち上がりシンクに俯いた。
目からは涙がにじみ出る。

「...う、ぉえっ..げぇっ....げほっ、げほっ」

バタバタとシンクから音がする。
そして微かに鼻をつく臭いがした。
俺は歪む視界で蛇口を捻って水を出す。
吐瀉物を流して、水で口の中をすすいだ。

あー...まだ苦しい、多分まだ吐く。
気持ち悪、ホント気分最悪。

息苦しくて勝手に涙出て来るし、吐くの
辛いし、よく分かんないけど手震えるし。
おまけに自分が小さく思えてくる。

「...っう、おぇぇ...ゔぇっ」

2度目の吐き気に、内容物を吐き出すと
鏡に写った自分はさっきより酷い顔だ。
なんかもうその顔に笑えてもくる。
...最近そういえば体重落ちたな。

微かに目の下に見えるクマに俺は苦笑
すると共に、大粒の涙を頬に流した。
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