ハイキューboys.

□影山飛雄という人間/影及
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影山飛雄は天才である。
それが故に孤独であり、弱点でもある。

ボールに触れていることが楽しくて
「好きこそものの上手なれ」とは、まさに
彼にぴったりの言葉じゃないだろうか。


俺の持論。
人は誰しも、天才的な力を持っている。
ただ、その力を発揮できる「ナニカ」と生涯
出会えるか出会えないかの違い。

そういう意味では飛雄はツイている。

バレーの神様が愛したのは影山飛雄だ。
そしてまた、飛雄もバレーを愛した。

ただ、そんな飛雄の前ではチームメイトは
非才凡人ただのバレー好きな部員でしか
なくて亀裂は徐々に大きくなっていく。

バレーの神様の手を払ったのは飛雄だった。


『もっと速く動け、もっと高く跳べ!!
俺のトスに合わせろ、勝ちたいなら!!!!』


プツン、何かが切れる音。
そしてガラガラと崩れていく音。
振り返ればそこには誰もいなかった。

天才とは常に孤独である。
誰が言ったんだか、全くその通りだろう。

凡人には分からない考えを天才は持っていて
しかもそれが、一般論だと信じている。
天才はどこか欠落しているんじゃないか。

俺の知ってる「天才」に欠落していたものは
仲間と、信頼だった。


話を少しだけ変えようか。
そんな「天才」が、俺は大嫌いだ。
こんなことを言えばただの僻みなのだが
理由は簡単、俺が天才じゃないからだ。

俺は先頭に立って皆を引っ張ってきた。
努力に努力を積み重ね、やっとの思いで
得た、力や技術、名声に数々の賞。

笑顔で皆を引っ張る、そんな俺の背中を
掴んだのは一回り小さい手だった。


「天才」は嫌いだ。
今まで「凡人」が積み重ねてきたものを、
無かったかのように追い越していく。

俺の背中を掴んだその「天才」は、ざまあみろ
とでも言いたげに俺を追い越した。


必死で追いかけた、必死で手を伸ばした。

でもその「天才」には仲間だとか信頼とか
そういうものが欠落していた。
とうとう足を止めた「天才」の横を、俺は
手を貸すことなく通り過ぎたんだ。


どうしてだろうか、無情にも。
今でも飛雄は俺を追いかけてるつもりだ。

アイツの中では、俺はアイツの何歩も
先を走っているらしい、馬鹿馬鹿しい。
本当はそんなことないのにさ。

俺のサーブを教えてもいないのに、
そっくりそのまま打ってみせた時に
飛雄は嬉しそうに笑っていた。

その時、俺はどんな顔をしていたっけ。


あぁ、もう...だから天才は嫌いなんだ。


俺はゆっくりと目を開いた。
天井のライトが、少し眩しく感じる。
大音量の声援に掛け声に笛の音。
そしてバレーボールの音。

目の前には烏野高校。

「天才」は、孤独を脱ぎ捨てて立っていた。
新しい仲間と信頼を得て立っていた。


「あーあ...天才は嫌だなぁ」




fin.
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