ハイキューboys.

□才能とか努力とか/菅澤
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「俺、バレーの才能を上げるから代わりに
人を殺せって言われたら殺しちゃうかもな」

ある冬の居残り練習の後、部室で制服に
着替えている時、何となくそう言った。
大地は、何を物騒な...と呟いていた。
俺はゴメンと苦笑する。

「スガはほんとにバレーが好きなんだな」
「...んー、それとはまた違うかも」

カーディガンを着て、上から学ランを
羽織り、俺は大地の着替えを待っていた。
そういえばカバンにマフラー入れてたか。

「バレーが好きなんじゃないのか?」

俺はマフラーを首にぐるぐる巻きながら、
うーんと唸って首を横にかしげた。
バレーは、好きだ。
だけど...なんていうのかな。

「大地とか旭とか清水とか、スタメンなら
田中、西谷、影山、日向、月島...他にも。
そいつらと一緒に戦うのが俺は好きだ」

俺の言葉に、大地は声を出して笑った。

「ほんと、スガらしい考えだな」
「その為に俺はバレーの才能が欲しい」

着替えを終えた大地を、真剣な目で見れば
大地もまた、俺の目をしっかり見る。
そして、すぐにそらした。

「雪降ってんなー、スガ帰るか」
「あ、おう」

部室から出て、最後に鍵を閉める大地を
横目に俺は降り積もる雪を眺めた。
...これじゃあ明日の朝にはもっと積もるか。
そんなことを呑気に考えた。
2人で階段を降りると、降り積もった雪に
足をズボズボと突っ込んでいく。

「女子みたいにムートン履きてぇな」
「俺達はゴツめのスニーカーだもんな」

そんな他愛もない会話が途切れる。
俺達2人が雪を踏みしめていく音だけが
暗い帰り道に響いていた。

「悔しいよ、影山にスタメンとられて」

そう呟くと、大地が俺を軽く見る。
俺は学ランのポケットに手を突っ込んだ。
中にはいつかのレシートが入ってた。

「俺にも才能があればなって何回も思った。
努力も、ずっとずっとしてるつもりだ」

だけど...努力じゃ敵わないんだ。
及川は努力で影山の上に立っているけど
俺にそれほどのバレーセンスもない。
悔しい、やっと3年が引退して俺が烏野の
正セッターになれるんだって思ってた。

「大地、俺はさ」

ギュッと雪を踏みしめる音を鳴らして、
俺が立ち止まると大地も振り返る。
はぁっと白い息が漏れた。

「影山にはきっと、勝てない」
「...っスガ!!!!」

大地がもの凄い剣幕で俺に迫る。
俺は黙ってその場に立ち止まっていた。
そして、だから...と続ける。

「俺はアイツと敵になるんじゃなくて、
アイツと2人で、部全員で強くなるんだ」

試合に出られてない間も、いつもより
冷静にコートの中を見渡せる。
色んなことを学べてる、無駄じゃない。

「オレンジコートだって夢じゃない」
「スタメン、諦めるってことか」

いや、と俺は首を横に振った。

「アイツに譲ってやるつもりはないよ。
だけどアイツがスタメンである間はさ、
俺は全力でサポートして、だけど自分自身
もスキルアップしたいって思ってる」

大地がはぁっと白い息を吐く。
そして踵を返して俺に背中を向けた。

「お前は強いよ、ちゃんと」

俺は少しだけ苦笑する。
そして雪道に、俺達の足跡が続いていった。




end.
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