ordinary(long)

□06>落ちた強豪
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私は烏野につき、頭に積もった雪を払った。
口から出る息は雪と同じくらい真っ白。

全身を払ったところで学校のドアを開ける。
職員玄関と書かれたドア。
中に入ると、外の天気の荒れ具合が余計に
見てとれて溜め息が漏れてしまった。

「武田先生...職員室かな」

烏野に来るのは初めてで、青城との違いに
私はキョロキョロとしていた。
まず受け付けというものがないのか...
勝手に記帳して、雑に置いてある入校証
を首から掛けて勝手に入っていいの?

しかも青城より古い建物だからなのか、
ところどころ修繕が必要そうなところが
あるし、何より寒い気がする。
私はクシャミをして入校証を首からかけた。

「職員室...は、2階かなぁ」
「あ、千尋か?」

突然聴こえたその声に聞き覚えがあった。
その声の主は校舎の奥の方から走って
来て、私の目の前に現れた。
黒いジャージに責任感の強そうな目。

「...大地君!!」
「寒かっただろ、こんな天気の中」

久々に見た大地君は前にも増してガタイ
がよくなったように見える。
前に会ったのは確か8月...だっけ?
あれからもう半年くらい経ってるのか。

「先生今ちょっと用事で対応出来なくて...
俺達も早めに練習切り上げるとこなんだ」

大地君は肩をすくめながら外を指さす。
...朝はこんなに降ってなかったのに。
でもせっかく来たし、先生には会いたい。
大地君に、スリッパに履き替えるよう
促され来客用スリッパを履く。

「でもまだ30分くらいやるつもりだからさ
体育館おいでよ、先生も来るだろうし」
「いいの?!」

体育館ってことは...偵察出来るじゃん!!
これはラッキーかもしれない!!
私はぶんぶんと首を縦に振った。
そして校舎を通され、案内される。
私の目の前を歩く大地君は、やっぱり
徹と似たような、でも違うような明らかな
貫禄が見て取れた。

「大地君、なんか変わったねー」
「えっ、そうか?」
「なんていうか雰囲気が大きい」

私の言葉に大地君が吹き出した。

「それは俺が主将になったからか?」
「えっ、大地君が...主将?!」

ニッと笑う大地君が再び歩を進める。
...あー納得、少なくとも徹が主将になるより
納得の人材だわ、大地君は。
大きいなんていうか...お父さんみたいな。

「主将似合ってると思うな、大地君に」
「そうか、それはありがたいなぁ」

しばらく廊下を歩き、第1体育館と
書かれた札をこの目で確認した。
青城とは違って、体育館は2つだけらしい。
大地君がガラッと扉を開けると、中から
ちょうどボールが飛び出してくる。

「千尋、危なっ.....!!」

反射的に出た私の手はボールを弾いた。
隣にいた大地君が安堵の息を漏らす。
きっと中学の時バレーやってなかったら、
ビビって何にも出来なかったんだろうな...

「千尋、大丈夫か?!」
「あ、慣れてるから全然平気...」

それより...烏野って超攻撃型チーム?
今の重い打球、正直ビックリしちゃった。
パワー力はズバ抜けてるのかも。
コートの中から頭を下げる部員に、私は
大丈夫です!!と手を振った。

大地君のエスコートで体育館へ入ると、
また聞きなれた声がする。
彼はまだ人懐っこい表情をしていた。

「千尋、久しぶり!!」
「スガ君っ、元気だった?」
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