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□05>答え
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「千尋ー、突き指したー」
「はいはーい」

季節は巡って1月の下旬。
外は雪がどっさりと積もり、休日部活の
始めに雪かきなんてザラになってきた。
そして寒くなり、部員の怪我も増加。
ミーティングで注意するように言わなきゃ
と思いつつ、徹の指にテーピングをする。


あれから2ヶ月程が経った。

徹に好きと言われて、次の日の朝はどんな
顔で会おうか...と考えていたというのに、
当の本人はケロッとした顔をしていて
あれは、夢だったんじゃないかと思った。

その後も好きだとかを言われる訳でもなく
本当にいつも通り、何も無かったかの
ような感じで私も忘れかけていた。


「はい、主将なんだから気をつけてよね」
「ごめんなさい、ありがと!!」

ニッと笑ってコートに戻っていく徹の
後ろ姿を見送って、私は溜め息をついた。
脇に挟んでいたファイルを開く。
さて...今の私には大切な仕事がある。

ファイルに挟まれた紙、それは日程表。
それと地域一帯のバレー部、バレーチーム
の名前が記載された紙が1枚ずつ。

『練習試合交渉、頼んだぞ』

つい先日、監督からそうお達しがあった。
聞けば毎年、3年マネがやることになる
年間通しての大仕事らしいのだ。
...まったく知らなかったのだけど。

「はぁ、荷が重いしツテもないよー...」

ファイルで顔を覆いその場にしゃがむ。
練習試合の交渉をするということは、ツテ
が必要になってくるし、自分の言動1つで
青城の印象が良くも悪くも変わっちゃうし。

ここら辺の高校だと...栄とか、萩野とか。
地域チームだと日程が合わなさそうだし。

「あ、そういえば...」

一校の名前が目に飛び込んでくる。
黒いジャージに、優しい笑顔が浮かんだ。
スガ君と...大地君と田中君。
私、烏野とちょっと交流あるじゃん!!

よっしゃーと喜んでいると、影が落ちた。
見上げると、まっつんが私を覗き込んで
いて、思わずビックリして肩が上がる。

「わっ...ま、まっつんどうしたの?!」
「いや、さっきから呼んでたんだけどね」

人当たりの良さそうな笑顔を浮かべた
まっつんに、申し訳なくゴメンッと謝る。
見れば、部活はもうじき終わる頃だった。
危なっ...声かけてもらわなかったら、
終わったの気づかないで監督のとこ行くの
忘れるところだったー、ほんと感謝...

「ありがと、まっつん!!」
「なんもだよ」

徹が部活終了だよーと全体に声をかける。
すると2年生が中心に掃除用具を取りに
行ったりボールの個数を確認していく。

青城は基本居残り自由だから、ネットなど
はそのまま、ボールも必要最小限だけ
残して部活は終了になるのだ。

私はまっつんに感謝しつつ、監督から
連絡事項を聞きに走っていく。
伊原ちゃんは既に監督の元にいた。

「2人とも集まったな、明日は体育館修繕で
業者が来るから居残りと遅れは厳禁だ。
詳細は明日、及川から言われるからいい。
あと如月は練習試合組めたら早めに
俺のところに言いに来てくれ、いいな」

解散、と言われ私達はお辞儀をしてから
ビブスの片付けや、怪我人と練習内容を
ノートにそれぞれ書いていく。
と、ビブスを任せていた伊原ちゃんの手際
が以前より手馴れているのに気付いた。

「ミーティングするよー、集合!!」

徹の声に、部員全員が中央に集まる。
私も慌てて集合した。

「マネから連絡、ハイ」
「お疲れ様でした、明日は体育館修繕で
業者が入るので自主練禁止、詳しくは明日
及川から連絡してもらいますので。
あと最近怪我が多いから気をつけて、以上」

その後、徹の指示やまとめが入って
5分ほどでミーティングは終了した。
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