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□04>復帰と好き
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「悪くなってたらどうしよう...」
「大丈夫だってば、らしくないよ!!」

あれから3週間。
珍しく弱音を吐く徹を必死に励ます。
正直、私も不安なところがあった。
私達はイスに座って診断結果を待つ。

3週間、徹はバレーをやらないどころか
授業の体育でさえも見学していた。
なるべく走ったり跳んだり、膝に負担が
かかるようなことも避けていた。
だから今日、この診断結果が悪ければ
もう、どうしようもない絶望的状況だ。

徹も私もうつむきかけた時、背後の
ドアがガラッと開いて医者が入ってくる。
慌てて2人で姿勢を正した。

「すみません、ちょっと所用が...」
「いえ、まったく」

えーっと、と言いながら医者は抱えてきた
書類をめくり看護師に何か指示を出す。
そして机前にあった画面が明るくなった。

「こっちが3週間前、こっちが先ほどの
レントゲンなんですけど......ほんの少し
なんですが治りは良好ですね。
腫れも徐々に収まってきてますし」

ガタッと大きな音を立てて徹が立ち上がる。
そして、本当ですか?!と大声で尋ねて
看護師に座るよう促される。
私は恥ずかしさに顔を手で覆った。
座った徹の太ももをパチンと軽く叩く。

「ごめっ...嬉しくて、つい」
「もう恥ずかしいからやめてよ...」

私達のやり取りを見て医者も笑うもんだから
ほんとに恥ずかしくてしょうがない。
それにしても、結果が良くてよかった。
これで悪化してるって言われたら、
帰り道、どうしようかと...

「そうですね、とりあえず2.3日様子を見て
大丈夫そうなら部活もOKとしましょう」

パッと徹の表情が晴れる。

「ただし、なるべく跳んだりしないこと。
サポーターをちゃんとつけて、膝に
負担がかかるような練習は避けて下さいね」

医者が私を見て、軽く頭を下げる。
そうだ、私がしっかり管理しなきゃね。
次はまた3週間後ということで、私達は
お辞儀をして部屋を出ていく。
院内は前より少しだけ混んでいた。

「よかった...ありがと千尋!!!!」
「ほんとよかった、一に連絡しなきゃね」

また以前の様に、ロビーへ移動して
自分達の番号が呼ばれるのを待つ。
私は一旦外に出てスマホを取り出した。
電話帳から岩泉一の文字を探す。

発信ボタンを押して耳元に当てると、
コール音が鳴り、回線が切れ変わった。

「あっ、もしもし私だけど」

電話越しに、一の応答する声とともに
自動車の音や話し声が聞こえる。
...外にでもいるのかな。
でも今日土曜だし、部活中なんじゃ?

『で、及川どうだった?』
「2.3日したら部活に出られるみたい」
「『まじでか、よかったー...』」

えっ、と私はスマホを耳元から離した。
一の声がダブったんだけど?
ハッと後ろを振り向くと、そこには
同じく、耳元からスマホを離した一が
青城のジャージを着て立っていた。

「何でここに一がいんの?!」
「いや、今日の部活早く終わったから...」

突然のことでビックリしたけど。
これで、説明する手間が少し省けたか。
徹も薬もらったら出てくるだろうし。

「ま、徹が出てきたらオメデトウくらい
声かけてあげてね、副主将さん」
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