ordinary(long)

□02>哀れな背中の王様
1ページ/9ページ


2年後―――


「中学の試合...?」
「そ、我らが北川第一の県予選の決勝」

あー...と私は顎に手を当て考えた。
中学総合体育大会か、懐かしいなぁ。
もうあれから2年...かな?
小さかった影山はもう3年生だ。

「岩ちゃんもいるけど一緒に行かない?」
「あーうん、行く」

ダンダンとボールが床に叩きつけられる音、
手に当たって弾かれる音、シューズの
スキール音、大きな掛け声。
私は青城の第一体育館のコートの中で
ニッコリと笑う徹に苦笑した。


晴れて3人とも青葉城西に入学してから
2年以上が経って、部活の雰囲気も
引退する3年生から2年生へと主力が移り
変わっていくのが日々感じて取れた。

徹はと言うと、もちろんカリスマ性の
ある選手だし1年の後半辺りから少しずつ
試合にも出るようになっていた。
今ではスタメンへと切り替わっている。
同時に一も、だ。

私は宣言通り、バレーを辞めた。
マネージャーとして周りの雑務をこなし、
たまに指導を受けにくるリベロ1年達に
私が出来るだけのアドバイスをする。

私達の関係は、変わっていなかった。

「可愛い可愛い後輩の決勝戦だもんねー。
俺が観に行かないと始まらないよ」
「こら及川ー、マネとしゃべってんなー」
「あ、はーいすみませーん!!」

引退間近の先輩に呼ばれ徹は去っていく。

...あれから2年か。
私達が入学したいって思ってた青城で
もう最高学年になるんだもんなぁ。

色んなことがあった。
あれから、何度戦っても白鳥沢に...
牛島に勝つことは1度もなかった。
そうして徹も牛島も、あと何日か後には
最高学年としてチームの要になっていく。

私は体育館の隅でタオルを畳みながら
はぁ...と深く溜め息をついた。
体育館の上、大きな時計の針が動く。

「7時ー、清掃始めー!!」
「うーす!!!!!!」

ボールが弾む音、弾かれる音が止んで
次はバタバタと皆の走る音がする。
私もタオルを畳む手を止め、ベンチに
座る監督の横へと走っていった。

マネージャーは各学年1人ずつしかいない。
特に引退する3年のマネは男だ。

3学年全員が監督の横へと走ってきて、
確認すると監督が口を開く。
ここ、青城ではマネが各学年の部員達に
連絡事項を伝えることになっている。

「明日は、普段なら練習をするところだが
中学県予選決勝だったな...部活は休みだ。
観に行くも行かないも各自で決めろ。
せっかくの土曜だ、しっかり休め」

以上、と伝えられ私達は一礼して去ろうと
するが私の名前が後ろから呼ばれる。

「如月、最近の及川をどう思う?」
「及川ですか......どう、とは?」
「サーブのフォームがたまに崩れてる。
足を庇ってるような、そんな感じだ」

あ...と思わず声が漏れて、慌てて否定する。

「怪我とかでは、ないと思いますけど。
念の為、及川にも聞いておきます」

頼む、と声がかけられ私は図らずとも
安堵の息を漏らした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ