黒バスboys.

□背中/黄笠
1ページ/1ページ


「たまにお前には感心するぜ」
「な、なんスか急に…」

部活の休憩中、笠松先輩から話しかけられる
のはいつものことだし普通のことだけど。
褒められることはあんまりない。
どうせお得意の皮肉か、と苦笑した。

「何の皮肉っスかー先輩」
「違ぇよ、よくモデルと両立してんなって」

あー…と俺は目を逸らす。
まぁモデルもやってると言えばやってるけど
事務所には部活を優先させたいって
言ってあるし、試合が近くなれば仕事は
一切入れないようにしてる。
極力、部活とかぶらないようにしてるし
俺が気にしたことはなかった。

でも…まぁ普通はそう思うか。

「仕事もOFFの日に入れてんだろ?」
「基本はそうっスね」

笠松先輩の眉間にシワがよる。
え、なんか怒らせること言った?!
俺は恐る恐る、あの…と呟く。

「ちゃんと休めてんのか、ただでさえ
お前はエースなんだから身体気をつけろ」

あ…と声が漏れる。
怒ってたわけじゃ…なかったんスね。
心配、してくれたってこと?


思えば中学では笠松先輩みたいなタイプの
人はいなくて、最初は熱い人だなーとか
口うるさいなーとか思ってたけど。
一人で黙々と練習続けてて。
過去の壁も一人で乗り越えてて。
ちゃんとキャプテンやってて。
弱いとこなんか誰にも見せなくて。

憧れが、彼に移った。
と言えばいいのだろうか。

もちろん青峰っちに憧れていた。
今でも慕ってるし凄い人だとも思う。
だけど、何かが違うんだ。
憧れって…一体。

「先輩」
「なんだ?」
「俺、先輩に憧れてるんスかね?」

笠松先輩はきょとん、とした後に床に
置いてあったタオルを俺の頭にかけて、
脇腹に蹴りをお見舞いしてきた。

「知らねぇよ、んなこと」
「つ、冷たいっス先輩!!」

タオルをどかして先輩の顔がやっと見えると
真剣な面持ちで遠くを眺めていた。
その表情に、何の感情も沸かなかった。

「俺は憧れてもらえるような奴じゃねぇよ」

その一言が何を意味してたのか。
直後に終了した休憩が追求を阻んで、
結局は分からずじまいだった。
ただ、1つ確かなこと。

その日はやけに先輩の背中が大きく見えた。






fin.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ