黒バスboys.

□僕の名は/赤緑
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「お前の名前の由来は何なのだよ」
「…は、俺の名前?」

部活後の自主練も終わり、俺と高尾が
部室で着替え帰り支度をしている時、
何となくだが高尾に話を振る。
何だっけな…と首を傾げる高尾を見て
俺はふと昔のことを思い出した。


「え、俺の名前の由来かい?」
「征十郎なんて珍しい名前だろう」

中1の夏、俺達が1年生としては異例の
一軍入りした年の暑い日のこと。
その日も俺達は2人、ちょうど自主練を
終えて部室で着替えていた。

「由来か…聞いたこともなかったな」
「そうか」

ワイシャツに袖を通した赤司は、でも…と
呟いてボタンを閉めていく。
開いたロッカーの内側にある鏡越しに
見る表情は少しだけ歪んでいた。

「俺はこの名前、好きじゃないんだ」
「…そうなのか?」

ロッカーを閉めた赤司は空中に指で“征”
の字を大きく書いてみせる。
そして困った様に首をひねり苦笑した。

「左側のぎょうにんべん、意味は行く。
右側は知ってる通り正しい、だろ?
正しいことをしに行くんだよ。
でもその正しいは“俺”にとっての正義。
世界征服とかいうだろ、あれだよ」

俺はイマイチ赤司の言いたいことが
分からずに怪訝な表情をした。
赤司は床のカバンを持ち上げる。

「怖いんだ、俺にとっての正義は世間の
正義と違っていたら…と思うと。
でも……“僕”も変わる日が来るのかもね」

そう言った赤司の目は今までに見たこと
のないような冷たい目だった。


「ちょっと、真ちゃん聞いてんの?!」
「あ、あぁ…すまない」

はっと俺は我に戻る。
高尾はもう帰り支度を終えており、先に
着替え終わっていた俺も立ち上がった。
部室の鍵を閉めると高尾が話し始める。

「和成って和むって漢字が入ってんじゃん?
だから人を和ませて、人を愛することが
出来ますように…って由来なんだってば」

そうか、と俺はふっと笑う。
高尾は不思議そうな顔をした。

「お前は絶対に変わってくれるな、高尾」
「…どったの真ちゃん、何かあったか?」
「いや、俺はもう2度と失わないのだよ」

大切な仲間を…チームメイトを…絆を。
もう2度と手放しはしないだろう。
高尾、もしお前が“高尾和成”でいられなく
なったのなら、俺は全力で助けよう。
俺は全力で大切なお前を守ろう。


今度こそは絶対に手放さない。
この手で掴んだ絆をこの手で守る。







fin.
 

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