黒バスboys.

□どーもはじめまして/青黄
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街外れにある小さな雑居ビルの2階。
奥の方にある扉の向こうから大声が響いた。

「はぁ、何で俺がっ?!」

今年23になる俺は上司から渡された書類を
握り締めて、キッと睨みつける。
上司と言ってもそこらへんにいるおばさん。
俺は溜め息をつき、ゴツと机に頭をついた。


青峰大輝、22歳。
高校を卒業してからは警察になるために
大学に進学したが途中で自主退学。
理由…は何か、性に合わなかったから。
それからはフリーター生活が続き20歳。

たまたま見つけた求人を頼りにやって来た
のがこの雑居ビルなわけで。
俺はここに勤めて3年経つところだ。

「仕方ないでしょ、相手からのご指名よ」
「おま…それにしてもコレは…ちょ」

握り締めた書類を開き直すとそこには
知った顔が気取った写真が何枚か。
それにそいつのプロフィールも。

つまるところ、俺の仕事はSPの真似事。
SPと言っても大層なモンではなくて、
派遣のボディーガードとでも言えばいいか。
なんというか、この仕事は何でも屋だ。
犬の散歩の代理とか結婚式の代理参加とか
家の掃除とかボディーガードとか。

そして今回の仕事はコイツのSP。
書類の写真上に名前が書かれている。


「いいじゃない、人気俳優の黄瀬涼太」

俺は大きく溜め息をつき耳を塞いだ。
…何なんだよ、黄瀬のくせに。
街を歩けばデカイ広告、テレビをつければ
幾度も流れるCMに主役ドラマ。

今更、人生失敗した俺を笑おうってか?
高校を卒業してもしばらくは連絡をとって
いたがお互いに俳優業と大学の講義で
忙しく、いつしかすっかり疎遠だ。

成人式で1度だけ顔を合わせたが、すぐに
テレビ取材やファンに引き離された。
あいつの中での俺は警察ということになって
いるはずなのに、バレたのか。

「いい仕事じゃないの、1ヶ月専属SP」
「コイツとは古い付き合いなんだよ」

あら、そうなの?!と驚く上司は俺がこの
仕事を嫌がっているということよりも
俺と黄瀬の仲に気を取られている。

「で、この仕事蹴っていいっスよね」
「駄目よ、即OK出しちゃったもん」
「即OKだぁ!!??」

俺は思わず立ち上がり、すぐ座り込む。
上司の口からは、これで知名度アップだの
なんだのと言葉が飛び出す。
お、俺の意志は…?!

反発しようと上司を睨んだが、俺の方など
もう見ておらず体から力が抜けた。
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