黒バスboys.

□君の支え/火黒
1ページ/1ページ


「ラスト1周、足止めないでー!!」

あぁ、足が重いし動かない。
息吸うのが辛いけど続かない。
僕はグラウンドに落ちる自分の影を見た。


夏、最近はよく外で外周をしている。
ただカントクの練習メニューは容赦ない。
2年生や火神君ですら息が上がっているのに
最後まで僕は保つだろうか。

先頭を走るのはキャプテンに木吉先輩、
続いて伊月先輩達、2年生。
そして火神君達1年生グループの後ろに
僕が必死に食らいついている形だ。

どんどんみんなとの距離が開いていく。

前に向いていた視線を地面に落として、
よろよろと足を前に運んだ。
あぁ、なんかもう吐きそうだ…

「……っ」

僕は足を止め、口元を手で軽く覆う。
リタイアしたいけど駄目だ…
あと10秒したらまた追いかけないと。
置いていかれると面倒だ。

上がる息を落ち着かせ再び走り出す。
と、何かにぶち当たった。
慌てて視線を上げると目の前には背中。

「吐きそうか、黒子」
「…火神君」

僕よりも前を走っていたはずの火神君。
一緒にいた降旗君達は、先に進んでいる。
火神君の手が僕の背中に添えられると
ゆっくりさすられて僕は落ち着いた。

「行けそうか」
「はい…大丈夫です」

そのまま手に支えられる様にまた走り出す。
ただ、そのペースはさっき自分が追いつこう
と走っていた速さよりも遅い。
火神君にしてみれば早歩き程度だろう。

「あの」
「これなら大丈夫だろ、最後まで一緒に
行って…吐くならゴール後にな」

僕は目を閉じて昔のことを思い出した。

「…火神君はつくづく似ています」
「似てるって、何に」


“テツ、吐くなよ大丈夫か?”
“ゆっくり行こうぜ、俺も一緒だから”
“ラスト1周だから頑張れ、テツ”


「…中学から変わってない僕も駄目ですね」

ぼそっと呟けば頭に手がぽんと乗った。
見上げれば火神君がふっと笑う。

「変わってるよ、お前はちゃんと」

僕は…君達の様な人に支えられてるんですね。
頬を緩めてしっかりと前を向いた。
あともう少し、もう少し。


過去を塗り替える君の隣にいられて嬉しい。
ただ、昔を引きずる僕がいるのは…

駄目なことですかね?





fin.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ