黒バスboys.

□壊れた糸と/紫赤
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「紫原って赤司に従順なとこあるよな」
「え、俺が赤ちんに〜?」

そんなことを言われたのは初めてで。
そう言ってきたのがキセキの世代の誰か
じゃなくてよかったなんて思ったりして。
そんなことない、とだるそうに答えては
赤司の出した指示通りの練習を続ける
あたり、本当に従順なのかもしれない。

もしそれが本当なら理由は…そうだな。
俺は赤ちんをちらっと見た。


赤ちんは温厚で聡明で、部員みんなからの
信頼も厚くて…理想の部長だった。
赤ちんの周りには沢山の人達がいて。
一人だなんて言葉に程遠くて。

だけど俺には何故だか赤ちんはいつも一人で
一人を好んでいるように見えた。

周りには無数の糸が張り巡らされていて
それのどれか1つにでも触れてしまえば
何かが壊れそうな予感がして。

だから俺はそれに決して触れないように
なるべく無難に過ごしてきたつもりだ。

ただ、糸に囲まれた赤ちんはたまに
人が変わって非情になる。
みどちんは早い段階で気づいていた。
俺も、赤ちんの変化には気づいていた。

その糸は一体なんなの?
触れたらどうなってしまうの?
中にいるのは本当の赤司征十郎なの?
じゃあ、非情な君は一体…誰?


「俺より弱い人の言う事聞くのはやだなぁ」


俺はただの好奇心で糸に軽く触れた。


1本だけ触れたはずの糸は、とても簡単に
ぷつりと途切れてしまって…
連鎖するように張り巡らされていた糸が
ぱらぱらと落ちていく。

必死で繋ぎ合わせても切れないように
押さえてみても、それはただの足掻きで。

赤ちんを壊したのは俺だった。
俺が迂闊に手を出したから…その結果、
俺が知っている赤ちんはいなくなった。
糸を…切ったのは俺だった。


「敦、ぼーっとするな」
「ごめ〜ん、赤ちん」

俺はふっと笑って、凍てつくような目で
こちらを見る赤ちんから目を逸らす。
自業自得だ、こんなの。


俺が赤ちんに従順な理由?

そんなの、赤ちんが俺より強いから。

そして何より。

俺が赤ちんを壊してしまったから…
ただの罪滅ぼしなのかもしれない。





fin.
 

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