黒バスboys.

□光が見えない/高緑
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「大丈夫だから真ちゃん心配しすぎ!!」

高尾が珍しくパスミスをしたり、
目をしきりに気にするようになったのは
俺にとっては別段変わらない時だった。

自慢のホークアイはどうしたことか、
後ろに立っている俺に気づかないことも
些細な段差につまづくことも多くなって。
ただ、高尾はヘラヘラ笑っていた。

「お前は目を大切にしなさすぎなのだよ。
その目の価値を分かっているのか」

そう言ってやった時の高尾の顔は、少し
寂しそうな悲しそうな表情で。
俺はその時分かってなかったんだ。
高尾が苦しんでいることに。
いつも通り笑っているアイツが、無理をして
笑っているということに。


「た、高尾どうしたその目!!」
「宮地さーん、大したことないスよー」

いつも通りヘラヘラしているアイツの
目に眼帯がついた時、俺は気づいた。
俺のそばにいたいと我慢していたことを。
高尾が嘘をついていたことを。


アイツの目は、もう駄目だということを。


「…どういうことなのだよ、高尾」
「そんな怖い顔すんなよ真ちゃん」

俺の目、結構前からおかしくてさ。
気づいてただろ、真ちゃんもさ。
なんか視力が急激に落ちる病気らしいわ。
真ちゃんの顔が見えてないワケじゃないぜ?
ただ、治療法が見つかってないんだと。

つーか、この目でバスケとかもう無理。
日常生活でも支障あんのにさ。
俺、1週間後に市立病院に入院すんの。

「何…言ってるのだよ…高尾」
「俺もう真ちゃんの隣にいられねぇわ」

色んな感情が渦巻いて渦巻いて。
離れたくないという束縛感。
これからどうしようという焦燥感。
ただ笑っていることに対しての苛立ち。
悲しくて腹が立った。

「…そう、か」
「うん」

ただ出たのはその一言。
否定とも肯定ともとれないその言葉は
俺の気持ちに重い重いフタをした。

「学校にも来られなくなるし、これはもう
真ちゃんとは離れ離れになっちゃうな」

俺は高尾の目をまっすぐ見る。
隠されていない方の右目は赤くて。
ただ、それが病気のせいではないのだと…
こんな目をいつかにも見たと。
何となくそう思った。

「俺とお前は離れられない運命なのだよ」
「えっ、ちょ…何言ってんの!!」

吹き出す高尾に俺はむっとする。

お前の目が見えても見えなくても、
コートにいてもいなくても、
そんなことは何の問題でもないのだよ。
お前は俺の唯一無二の相棒なのだよ。

その言葉に高尾は目を細めて。

「それ、目が見えなくなってから言って
もらわないと恥ずかしいんだけど」

縁起でもないと俺は小突いた。
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