黒バスboys.

□君じゃなく/火黒
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俺の腹辺りに抱きついて大声で泣く
こいつをどうしようとうろたえ数分間。
俺はもうこの制服は無事じゃないだろうな
と思い首をかしげ溜め息をついた。


「ふー、喰ったな」
「火神君は少し食べ過ぎですよ」

マジバを出た時、少し寒いなと思った。
それは黒子も同じ様で白い息を吐く。
もう冬が来るのは間近。
WCまではあと本当に少し。

黒子は買ったバニラシェイクを飲みきれず
俺の横を歩いて飲み続けている。
俺はそんな黒子を小突く。

「WCまであとちょっとだな」
「そうですね」

WC初戦の相手は青峰のいる桐皇。
否が応でも、あの負けた試合を思い出す。
俺はちらっと黒子に視線を落とした。
なんてことのない顔で歩く奴。

元々表情豊かじゃないコイツに対して
察しもよくない自覚ありの俺。
だからこの時も、俺のWC発言に黒子が
どんなことを思ったのか分からなかった。

「前から気になってたんだけどよ」
「…何ですか?」

黒子がバニラシェイクに刺さったストロー
を加えながらこちらを見上げる。
俺はがしがしと頭をかいた。

「お前って、大抵スタメンで出る時って
観客から…その、酷く言われてんじゃん?」

黒子の体格、存在感の無さ、他人から
見たらどこか頼りない背中。
もちろんチームメイトからしてみれば、
コイツ程頼れる奴はいないわけだが。
観客からの評価は酷いものだ。

あいつが誠凛のスタメン?
あんなんで何が出来るんだよ。
ただの人数合わせなんじゃねーの。

コートにいる俺にそういう声が聞こえる
ってことは、もちろんコイツにもちゃんと
聞こえてるわけで。
その度に俺はいらいらが募る。
お前らはコイツの凄さを分かってねーって。

でも当の本人は全く気にしてないようで
それこそ、周りの騒音はシャットアウト
して試合に集中しているようだが。
俺はどう思ってるのか気になっていた。
別に深い意味があって聞いた訳じゃない。

「だから、お前はどう思ってんのかなって」
「…あんまり気にしたことはないです。
というか帝光からそれは言われてたので
今更ですし、もう慣れましたよ」

俺は腑に落ちない回答に首をひねった。
慣れたって…痛みに慣れたら駄目だろ。


俺は小さい時からそうだった。
体格にも恵まれ、性格も明るいほうだ。
だからバスケをしていても自然と目立つ
ポジションを任されることが多い。
スタメンとして試合に出れば見た目で、
過小評価されたことはまずない。

だから俺には黒子の気持ちが分からない。

コイツの言うように光であり続けた俺は
影であり続けた黒子とは真逆の存在。
試合中に無差別に罵られた経験はないし
酷い評価に耐えながら試合をした事もない。


黒子は俺が腑に落ちない様子を見て、
少し困ったようにうつむいた。

「でも…試合に負ければもっと悔しいです」

車通りの激しい大通りを抜け、俺達は
人通りの少ない脇道へと入る。
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