黒バスboys.

□繋ぐもの/青黒
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『テツ、俺…もう駄目かもしんねぇ』

電話越しで聴いた君の声は震えていた。


大学2年生の冬、高校を卒業した僕達は
また別々の大学に入りそれぞれの人生を
歩み始めていたわけで。

それでも青峰君とは連絡をとっていたし
家が寒いだの食べ物がないだのと言い
僕の家に転がり込んで来る事もあった。
その逆も然り、だ。

ただ変わったことと言えば、僕はバスケを
辞め青峰君は続けていたということ。

もちろん最初は辞めることを反対された。
僕だって続けられるなら続けたかったし
青峰君とバスケをしたかった。
でも僕は保育士になるための勉強を最優先
させなくてはいけなくて。

青峰君はと言うと、警察官になるために
何かしら体を動かしていると有利な訳で
バスケ存続の有無はそこだった。

だからと言って関係が途切れる事は無く
お互いが事情を承知していた。
そんな何でもない日のこと。


いつもの様に大学の講義に出てバイトから
帰ってきた僕が、今日の夜ご飯は何に
しようかな…なんて考えながら机に置いた
携帯のディスプレイは点滅していた。

見ると着信が1件。
青峰君からで既に2時間が経っている。
僕は携帯を操作しかけ直した。

コールが10回程、いつもより長めに鳴り
ようやく出た青峰君から返事はない。

「…青峰君、何か用でもありましたか?」
「……………いや」

そう答える青峰君は明らかにおかしい。
いつもの様な覇気も無いし、声も小さい。
おまけに口数が少ないなんて珍しい。
僕は冷蔵庫を漁る手を止めた。

「………青峰君、何かありましたか?」
「…………」

返事がない代わりに通話が切れる。
つーつーと機械音が耳元で鳴り響いた。
僕は仕方無しに通話を終了する。

…今までこんなことがあっただろうか?
青峰君は何だかんだと言っていつも元気で
嫌な事があっても意外と表には出さず。
こんな青峰君は初めてだ。
なんとなく心が不安感を抱く。

僕はもう一度携帯を操作し電話をかける。
次は2回程のコールしか要さなかった。
電話越しは何だか騒がしい。

「あ、もしもし黄瀬君?」
「えっ、黒子っち久しぶりっスねー!!」

ドラマの撮影の休憩中だったんスよ、と
言う彼とは最近あまり会わない。
というか、黄瀬君もバスケは高校で
辞めてしまったようで今は趣味程度でしか
続けていないらしい。

もっと言えば、彼は今や人気俳優だ。
僕のような凡人とホイホイ会う時間はない。
僕は挨拶もそこそこに慌てて聞く。

「黄瀬君、青峰君から何か聞いてませんか?」
「特に何も…何かあったんスか?」

さっきの電話の内容と、一昨日会った時
にはいつも通りだったことを告げると
黄瀬君はすこし待っててと言う。
1分ほど経つと黄瀬君の声が再びした。

「うちの撮影のバイトに青峰っちの通う
大学のバスケ部の人がいて、今聞いたら
今日練習中、衝突事故があったらしくて
青峰っち、肘を強く打ったらしいっス」

…肘、といえば。
高校の時に肘を壊していたはずだ。
完治はしたものの1回怪我をしたところは
前ほど強くはなく脆くなるのが一般的。
急に体中から血の気が引いた。

「ありがとうございます黄瀬君」
「…黒子っち、大丈夫スか?」

大丈夫です、と呟く程度に言うと僕は
通話を切って急いでコートを羽織ると
勢いよく家を飛び出した。
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