黒バスshort.

□いつも並ぶ彼/青峰
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「ポテトLサイズ、コーラLサイズ…と、
チーズバーガーお一つでよろしいですか」

あぁ、と頷く客に合計金額を提示し財布
から代金が出されるのを私は待った。
午後7時半を少しだけ回った時間。
彼が私のレジに並ぶのはいつもだった。


…この制服、桐皇学院?
私が彼のレジを担当し始めたのは4月下旬。
桐皇の近くにある如月女子高校に通う私は
部活に入らず、このマジバでバイトを
始めたのだけれど…正直桐皇は苦手だ。

桐皇の威圧的な男子達。
男に耐性が無いし、部活後の男子達の汗の
匂いは申し訳ないけど好きじゃない。

そんな私の元に彼はやって来た。

まぁ、客が並ぶのは当たり前なんだけど。
私がバイトを上がるのは午後8時。
そのギリギリに彼はレジに並ぶのだ。

すごく大きい背に少し日焼けした黒い肌。
友達と来るのはホントにまれで、大体は
1人で来てさっさと食べてさっさと帰る。


「1年か?」
「…え、あ、はい」

彼に話しかけられたのはその少し後。
戸惑いながら答えれば、彼は微笑して
俺もだ、と短く言ってレジを後にする。

へぇ…1年生なんだ。
ずっと2年生なのかなって思ってた。
それに、あの人…あんな風に笑うんだ。

また別の日。

「あなた…名前は?」
「桐皇学院1年の青峰大輝だ」

私は如月女子高校の八重樫千広です、
と返せば青峰君はまた少しだけ笑う。
そして何事も無かった様にレジを後にする。

そしてまた別の日。

「部活入ってないのか?」
「中学の時は吹奏楽部に入ってました」

そうか、と短く言った青峰君はいつも通り
トレーを持ってレジを離れようとする。
私は慌てて声をかけた。

「…っ青峰君は?」

青峰君がその問いに答えることはなく、
店の奥の方へと消えていった。


それから、青峰君がレジに並ぶことは
ぱたりと無くなってしまった。

7時半を回っても、8時ギリギリでも。
バイトを9時まで伸ばした日もあったけど
私が青峰君に会うことはなくなった。

「青峰君…どうしたんだろ」

私は溜め息をついて今日もバイトに行く。
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