黒バスshort.

□そんなの嘘なわけで/青峰
1ページ/3ページ


「あとは大輝のテーピングと…なんだっけ」
「おい千広、サポーターだっつの」

いつも通りの雪の降る週末。
俺の買い物に付き合う千広。
幼馴染みの千広とは月一でしか会わない。
月に1回だけ、どうしてもさつきの予定
が会わない週があって、その時だけ。

千広はそうそう、と苦笑いして
カゴにテーピングと肘用のサポーター
と自分用の目薬を入れた。
カゴの中身を確認して俺を見上げる。

「これだけでいいんだっけ?」
「バッシュも見に行きてーけど、さつき
がいる時でいーわ」

俺は内心、やっちまったと思った。
テーピングやサポーターも分からない
コイツがせっかく予定をあけて俺の買い物
に付き合ってくれたっていうのに、
これじゃお前じゃ役不足だって言ってる
様なもんと同じじゃねーかよ。

「あー…その、なんつーか」
「私じゃ分からないから、その方がいいよ」

ただ、千広は屈託の無い笑顔で
俺に笑いかけると財布を取り出した。
あ…別に傷ついてねーじゃんか。
俺は弁解しようと出そうになった言葉を
飲み込んで一緒にレジに並ぶ。

「4315円です」

買い終わったものを入れたレジ袋を
千広が持とうとするのを
俺は横から奪い取って店を出た。
外は雪が降っている最中。

「わぁっ…雪だね大輝!!」
「お前、なんつーか…犬みてぇだな」

ぶっと吹き出す俺に千広はむっとする。
雪なんかではしゃいで、子供みてぇ。
今時の高校生はもう雪じゃ喜ばねーよ。

「さみーっ、おい、マフラー貸せ」
「え、私も寒いよっ」
「お前、耳あてしてんじゃん」

千広は仕方ないなぁ…と文句を
言いつつも自分の青いマフラーを
俺の首元に巻き付ける。
なんとなく、甘い匂いがした。

ふと、降りしきる雪の向こうに俺は
知っている人影を見つけた。

「千広、一緒来い」
「大輝?!」

俺は千広の手首をぐいっと掴むと
そのまま人影の方に歩いていく。
そしてそいつの肩をぽんぽんと叩いた。
振り向いたそいつは帽子にマフラーに眼鏡。

「よぉ黄瀬」
「あれっ、青峰っちじゃないスか!!」

モデル様も大変だな、と黄瀬を茶化すと
あれ、と俺の後ろの方を覗き込んだ。
後ろには俺の袖を掴む千広。
あぁそうか、こいつ黄瀬と会うの初めてか。

「どーも、青峰っちの幼馴染みっスよね?」
「モデルのきせりょ…?」

黄瀬は苦笑いして頭をかいた。
どうやらこいつん中では黄瀬=バスケ
だとかキセキの世代だとか…そういった
認識はなくて、ただのモデルのきせりょ
という認識だけらしい。

「こいつも帝光からのチームメイトだ」
「そ、そっか…私、帝光中じゃなかったから」

幸いなことに千広はあんまり
モデルとかに興味のある方じゃないらしく
俺達3人で昼飯を食べることになった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ