黒バスshort.

□ラッキーアイテム/緑間
1ページ/2ページ


「お兄ちゃん試合でしょ、遅れるよ?」
「あぁ…分かってるのだよ」

うちの兄は他と比べて少し変だと思う。
世間様ではお兄ちゃんは10年に1度の
バスケの天才、キセキの世代の
天才3Pシューターと言われている。

朝から晩まで部活の毎日、キセキの世代
の中でも1番ストイックなお兄ちゃん。
それは高校入学後も変わらなかった。

変わらなかったのはそれだけじゃない。
それは…毎朝恒例の“おは朝占い”。
なんでも紹介されるラッキーアイテムを
試合に持っていくと勝利出来るとか。
今日も彼はおは朝占いを見ていた。

「練習試合…ほんとに時間大丈夫なの?
私は部活あるからもう家出るからね?」

心配そうに兄を見ると静かに頷いた。
おは朝占いを見終えてから家を出るらしい。
私は首を傾げてリビングを出た。
そして後ろ髪を引かれる思いで家を出る。

…今日の集合時間、早いはずなのに。
ほんとに大丈夫なのかなぁ?
まぁ、お兄ちゃんならきっと大丈夫か。

「アレッ、千広ちゃんじゃん?」
「あ…高尾先輩?」

玄関前には、自転車の後ろにリアカー
をつけた通称チャリアカーを引いた
高尾先輩が片手を上げていた。
高尾先輩はお兄ちゃんと同じチームの
いわゆる相棒みたいな人だ。
毎朝移動は彼の運転するチャリアカー。

「これから部活?」
「はい、すいません…お兄ちゃんまだ
おは朝占い見てて、もうちょっとなんで」

頭を下げると高尾先輩は大声で笑う。
と、家の玄関の扉が勢いよく開いた。
中からお兄ちゃんが出てくる。

「真ちゃん、今日のラッキーアイテムは?」
「高尾、集合場所まで急ぐのだよ!!」

私はお兄ちゃんがリアカーに乗ったのを
見て、高尾先輩に頭を下げて歩き出した。
が、後ろから大声で呼ばれる。

「千広何してる、早く乗るのだよ!!」
「ん……は、はっ?」

しばらく硬直しているとリアカーから
急いで降りたお兄ちゃんが私の手首を
力強く掴んで急に引っ張る。
そしてリアカーに強引に乗せられると、
お兄ちゃんも飛び乗り、高尾先輩が
よいしょよいしょと漕ぎ始めた。

「ちょ、お…お兄ちゃんっ!!」
「揺れるから黙っているのだよ」

そう言われてお兄ちゃんの胸に頭を
押し付けられぎゅうっと抱きしめられる。
お兄ちゃんの鼓動がすごく伝わり、
柄にもなく私の頬が赤くなるのが分かった。

「にしても真ちゃん、何で千広ちゃんを?」
「今日のラッキーアイテムは…い、いや。
なんでもない、うるさいのだよ高尾!!」

私は揺れるリアカー、お兄ちゃんの腕の中
顔を見上げると何となくお兄ちゃんの
顔も赤く染まっているのが見えた。
…お兄ちゃん?


その後、秀徳と相手校との練習試合が
行われているベンチに無理矢理強引にも
座らされた私は他選手から可愛がられ
試合も50点差で大勝ちをした。

「千広ちゃん、部活大丈夫?」
「はいっ、高尾先輩も試合お疲れ様です」

試合後、私は控え室外のベンチに座り
お兄ちゃんを待っていた。
高尾先輩は私を見てにやりと笑う。

「まぁ、今日は真ちゃんと一緒にいてやんな?」
「は、はぁ…」

高尾先輩の後ろ姿を見て私は溜め息をついた。




fin.
何だって今日は…
すまなかったな
まさか、おは朝占いと関係してる?
(おは朝占いのラッキーアイテムが
可愛いもの、だとは口が裂けても言えんな
)
ちょっと…?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ