黒バスshort.

□きっと大丈夫/降旗
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何で俺はいつまでも変わらないんだろう…


ある日の部活で俺はふと、そう考えた。
そんなのは言ってみれば今更だけど
同じ1年の火神や黒子はすごいじゃんか。

俺はシュート練習していた自分の手に
収まったボールを無言で見つめた。

…俺は何も進歩してないな。
俺だって試合には出たい、出たいけど。
2年と火神と黒子…スタメンのうちの一人
にでも勝てる気は全くしないし。

結局、俺は何の為にここにいんだろ。


「フリ、ちょっといいか」
「あっ…はい」

キャプテンに呼ばれ、俺は後を追い
体育館を出て向かい合った。
キャプテンが頭をがしがしとかく。
あ…何となく、嫌な予感がする。

「黒子のパスの練習相手してくんねーか」
「…練習相手、ですか」

黒子のスキルアップの為の練習。
つまりはその当て馬が俺ってことか。
そりゃそうだ…試合に出れない奴が
練習するより試合に出れる奴の練習に
付き合う方が効率がいいもんな。

「いいっすよ、もちろん」
「悪いなフリ…じゃあ頼むわ」


戻っていくキャプテンの後ろ姿を見て俺は
静かに拳に力を込めた。
笑え、光樹…感情を表に出すな、負けんな。

俺は歯を食いしばると体育館に戻った。

「降旗君、どうかしましたか…?」
「えっ何でもないけど…よし、やるか!」

どうしたもこうしたもねぇよ。
ホントは辛くて辛くて仕方ないんだ。
部活を思えばそりゃ黒子のスキルアップ
が大切なのは分かってるけど…
やっぱ俺だって…試合に出てぇよ。

「降旗君…やっぱり今日は様子が変です」
「変って、どこがだよー」

俺が声を出して笑うと黒子は少しだけ
困ったように眉を下げた。
そして抱えたボールを抱きしめる。
俺は黙ってそれを見ていた。

「すみません、付き合ってもらって…」
「黒子…?」
「降旗君も自分の練習があるのに」

言うな…そんなこと、言うな黒子。
そんなこと言われて惨めなのは…俺だ。
頼むから、それ以上言うな…
俺の目から一筋涙が流れるのが分かった。
俺は黒子に背を向ける。

「降旗君…どうしたんですか…?」
「…言うなよ…もう…もう、いいから!!」

俺は声を荒らげて体育館を飛び出した。
後ろからみんなの声が聞こえた気がした。
外は雨が降っていた。
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