ordinary(long)

□01>天才ではない
3ページ/10ページ


「監督と話すなんて珍しいな」
「なになに、ナンパされてたのー?」
「勝手に私の話すんなグズ川のくせに」

酷い!と徹が叫び、私達は学校を出る。
外は夕暮れ、いつもより早い下校だ。
練習試合のある日はいつも早い。
それにしても...と徹が大きく伸びる。

「1週間後には、俺達もう3年生かー」
「春休み、終わって欲しくねぇな」
「どんな1年が入ってくるかな」

んー...と徹が考え込む。

「俺より上手い後輩は嫌だ」
「何言ってんだ、ボゲ」

あ、と私はあることを思い出した。
そういえば私達が小学校の時に入ってた
バレーチームとは違うチームに、すごく
上手い小学生がいるって聞いたことあるな。
確かその子、セッターだったような。
秋山小出身で小2から...だっけ。

「痛いっ、痛いよ岩ちゃん!!」
「テメーは自分の心配だけしてろアホ川」

...まさか、ね。
私の背中に嫌な汗が滲むのが分かった。
あれ、私...何を焦ってんだろ。
徹は上手いに決まってる、努力家だもん。

「...千尋ちゃん、なしたの?」
「え、あ...な、なんでもないけど」

あれ、私...うまく笑えてるかな。
一も徹も、心配そうな顔をしてる。
そうだ、その子も北一に来るって決まった
わけじゃないし、たかが小学生。

「大丈夫、お腹すいただけだから!」
「...さすが千尋だな」
「あ、岩ちゃんさり気なく馬鹿にした?」

いつもみたいに馬鹿にし合う2人を見て
思わず笑いがこぼれる。
...うん、私ちょっと心配しすぎだな。
大丈夫っしょ、問題ないって。

そういえば、と徹が一の攻撃をかわしつつ
私の方をちらっと覗き見た。

「千尋は志望校どこにするの?」

一も、その質問に攻撃をやめて私の
答えを待っていた。
あーそっか、もうそんな時期か。
今までずっと一緒だったから変な感じ。

「徹と一はどこに行くの?」
「まだ決めてないけど青葉城西かなー」

青葉城西、かー...これまた強豪校。
でも確かに2人に合ってそうな高校だ。
私は首をひねって何の気無しに言う。

「じゃあ私も青葉城西なのかなー」
「なのかなって、お前それでいいのかよ」

うん、と頷くと徹がニッコリ笑う。
なんかこの2人と離れるって想像出来ない
んだよねー...コレ腐れ縁ってやつかな?
別に私に意志がないわけじゃなくて、
2人と一緒にいることが意志、みたいな。

「まぁ、まずは目先にある春休み明けの
一斉テストが問題だけどな、及川?」
「うっ...痛いとこ突くね岩ちゃん」

私達は夕暮れの中を騒ぎながら歩く。
こんな日がずっと、ずーっと。
続くんだ...って思ってたんだけど。
嫌な予想はすぐに当たった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ