カーニヴァルL

□1、
1ページ/4ページ

…なんでこんなことに



事の始まりは、私のくだらない好奇心だった。

だって、行くしかなかったんだ。

何かを引きずった跡、そして血。

この量からして、生きているとは思えないが、この正体がなんなのかは気になる。

…行くしかない。

行かないなんて選択肢はない。



そして来た結果がこれだ。

かわいい男の子が恐い化け物から必死に逃げていて、今にも捕まりそうだ。

このまま見て見ぬふりするのも良心が痛む。

とても人間とは思えない容姿の化け物。

その背中(肩?)から生えた二本の腕が少年に触れる直前、名無しさんは二人の間に入り、手持ちの竹光で化け物の腕を受け止めた。

刀抜くのめんどくさかったし、血浴びるのも好きじゃないから、鞘で。

少年はかなり驚いているようだったが、化け物の力は思いのほか強く、少年に構っている余裕はない。

これ以上は耐えられそうになかったので、渾身の力で化け物の腕を押し返し、互いに少し距離をとったところで、少年が口を開く。


「あの…」

「んー?」

「あ、ありがとう」


かわいい。

それが、少年に対する、名無しさんの第一印象だった。

まぁ初対面で急にかわいいなんて言っても引かれるだけな気がしたので、勿論言わなかったが。


「え、あぁ、どういたしまして」


喉元まで出掛かっていた言葉をどうにか飲み込
み、少年に返した。

そのとき、今まで黙っていた化け物が話し出す。


「邪魔をしないで頂きたい」

「邪魔なのはお前だよ」



名無しさんはすかさず言い返す。

実際何を邪魔されたのかと問われれば、何も、と答えるしか無いのだが。

しかし化け物は細かいことは気にしないようで、問答無用と襲いかかってきた。


こんなのに会ったことはないし、ましてや戦っ
たことなんてあるわけがない。

冷静に考えてみれば、まともに戦って勝てる相手ではないだろうし、だからといって逃げ場があるわけでもなし。

まさに絶体絶命の状態だ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ