もうひとつの大空-ブック

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「はあ!?」

ベルが大声を出す。
声を出さなくても、皆が驚いていることは顔を見ればわかる。
あのマーモンでさえ、ぽかんと口を開けている。

「千代ちゃん…それ本気なの…?」
「うん。本気だよ。」
「でもさ、その計画って…」

そう、ザンが言った計画。
それは、私がボス候補として正式にお兄ちゃんに戦いを挑むというもの。
ベルたちが反対するのも無理はない。
命をかける戦いなんだから。

「お前の兄を…殺すかもしれねーんだぜ?」
「そう、知ってる。でもね、私の夢を守るために必要なことなんだよ、これは。」
「夢?」
「うん、夢。」

ベルたちにだって教えていない私の夢。
その夢は、私が十代目にならないと叶わない。

「…覚悟はできてるんだよ。」
「それは…人を殺す覚悟?」
「それでもあるよ。」
「ふーん。ま、いいや。」

私の肩にベルの頭が乗せられる。
しししっ、と笑いを浮かべながらこちらに目線を向ける。

「俺は姫のいうことに反対はしねーよ。ボスだって賛成したんだろ?」
「…。」
「な?お前らもいいだろ?」

私に向けられた目線が皆に向けられた。
そんな皆はこくりとうなずいた。

「私は別にいいわよー?」
「僕も金が手に入るならやるよ。」
「ハッ、この頃暇だしなぁ。」
「…俺もボスが言うならやってやるぞ。」
「あら、レヴィいたの?」
「なぬっ!?」
「なぬじゃねーよウニ。」
「ウニ!?」

場の雰囲気が一気に和んだ。
やっぱりレヴィはムードメーカーだな。
まあ、私も気付いていなかったんだけど。

「てめえら。」

和んだ空気が一気に凍った。
ある意味ザンもムードメーカーかも。

「会議室に行け。」
「何で?」
「ここでは盗聴される危険性がある…ってことだよね、ボス。」
「あ、そっか。」

ここは食堂。何も盗聴対策はしていない。
基本的に食事中はみんな喋らないから。
それに比べ、会議室では電波を妨害する材質で壁が作られている。
納得した皆は、ぞろぞろと廊下へと移動していった。

「いいんだな、本当に。」
「スク…うん、いいの。」
「…そうか。」

そう言って笑うと、ポンと頭に手を置いてから去って行った。

(スクはお兄ちゃんみたいだ)
(もう一人のわたしのお兄ちゃん)

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