どり
□熱く甘いキスを5題
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4.息も止まるくらいに
息が出来ない。
最近、上手く息が出来ない。呼吸しているのに、上手く吸えている気がしない。
原因は分かっている。強いストレスからくる、精神的なもの。
いろいろあって不安で嫌になって落ち込んで。それがずっと続いていることによるもの。
「はぁ…」
深呼吸をする。それでも上手く吸えている感じがない。
何度か繰り返していると、隣の席の人に訝しげに見られた。
「どないしたん?」
「なんでもない」
ニッコリ笑って立ち上がる。次の授業はサボろう。そう思って屋上に向かった。
屋上で寝転んでいると、また苦しくなる。目を閉じたまま、息を吸うのを意図的にしていた。
「何や、息出来んのか」
そう聞こえて目を開けた。
「ん…」
目の前には忍足の顔。そして唇には柔らかい感触。
息を吹き込まれるようなキスをされていると気付いたのは、彼の舌が私の口を割って開けたとき。
離れて空気を取り込むように息を吸ってから、また口を合わせる。
それが数回続いて、忍足が顔を離した時は息が吸えていて。
「なんや、結構効果的なんやな」
「な、んで…?」
上手く息が吸えたことよりも、キスをしてきたことの方が不思議だった。私の驚いた顔を見ながら、忍足は楽しそうに笑う。
「ショック療法やろか。なんか、苦しそうな顔してたやん?だから人口呼吸」
そう言って綺麗に笑う。それに言葉を失う。
忍足ってこんなに綺麗だったっけ?
忍足の顔を見ながら頭の片すみで考える。
ぼんやりしてたのだろう。気付いた時にはまた忍足の顔が目の前にあった。
「礼、貰うな」
そう言ってまた唇を塞がれた。だけど今度はさっきまでのような人口呼吸のようなキスではなく。
「ふあっ」
上手く息が出来ない程の熱く激しいキス。でも、頭の片すみで、ああ、これがディープキスかなんて考えてしまう。
それに気付いたのか、忍足の舌使いがさらに激しさを増す。それに思考回路を奪われ、ただ、翻弄される。
息が出来ない。
そう忍足の胸を叩くと、舌を思いきり吸われた。それに足から力が抜ける。
ペタリと座り込む。それを追いかけるように忍足もしゃがみ込み、まだ息苦しい程の激しいキスを続ける。
しばらくして忍足が離れた。ようやく息が吸える。荒い呼吸を繰り返していると、忍足が顔を持ち上げてきた。
「また息が出来んなったら言ってな?人口呼吸してやるさかい。もちろん、礼はしっかり貰うで?」
そう言って艶やかに笑いながら軽くキスをして去っていった。