どり
□熱く甘いキスを5題
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2.反論さえ呑み込んで
大好きな彼。いつも私を翻弄して、あわてふためく私を楽しそうに見ている。
いつも私を振り回す彼が拗ねた。原因は分からない。聞いても教えてくれないから。
「もう、一体なんなのよ?」
「……」
無言でそっぽをむく彼氏にため息をつく。時々こうなることがある。そういうときは相手しないに限る。
だからそんな彼をそのままにしてベッドに寝転び雑誌を読む。
しばらくすると、彼がベッドの上にのってきた。それに読んでいた雑誌から顔を上げ彼を見る。
「話す気になった?」
「俺以外の奴を見るな」
それは無理でしょ!?
そう伝えようと口を開くが、それは音にならず、彼の口内に飲み込まれた。
唇を彼の唇で塞がれる。
「俺以外の奴の前であんな笑みみせるな」
僅かに唇を離して、怒ったような拗ねたような声で囁いてからまた唇を塞ぐ。反論をさせないように長く深く。
苦しくて、わけがわからなくて彼の胸をたたくけど、そんな抵抗は全く無意味で。さらに深く貪られる。
どのくらいされてただろう?長い間キスをされて、ようやく離されたときは酸欠でクラクラしていた。
そんな私を優しく、だけど力を込めない分を想いが補っている強さで抱きしめてくる。それに困りながらどうにか言葉を紡ぐ。
「一体…何のこと?」
「今日、幸村と楽しげにはなしよった」
その言葉で思い出すのは雅治を待っている間のこと。幸村君が時間潰しにと付き合ってくれていた。
「あれはただ」
「知っちょる。でも、嫌じゃ」
そうやって拗ねる恋人が愛しくてたまらない。だから優しくキスをする。
「馬鹿ね。私がこういうことしたいって思うのは雅治だけだよ?1番話したいのも、会いたいのも」
そう言っても嫉妬は収まらないようで、何かいいたげに口を開いた。だけどそれをさせない。
反論は飲み込んでもらうわよ?
そう唇で伝えるように、私から深いキスを送った。
雅治の機嫌が直るまで…