どり
□熱く甘いキスを5題
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1.恋の味を教えて(元は恋の味を教えよう)
「手塚」
そう名前を呼ぶと怪訝そうに振り返る。それはいつものこと。だって私が手塚を呼ぶ時はいつも手塚に迷惑がかかるから。
「今度は何だ?」
そう言って嫌そうながらもちゃんと立ち止まってくれる。その優しさに私は惹かれた。
「今度はね、手塚に聞きたいことがあるの」
そう言いながら近づく。
「恋って知ってる?」
「恋?」
「そう、恋」
笑みを浮かべて言う。それに手塚は怪訝そうながらも考えてくれた。
「普通は人を好きになることだが…お前のことだ、そんな答えが欲しいわけではないんだろう?」
ため息混じりに話す手塚に私は笑う。そう、そんなことはわかりきっている。私が知りたいのは別のこと。
「そう。私が知りたいのは恋の味」
「恋の味?」
不思議そうに呟く手塚に私は笑いながらさらに近づく。
素直じゃないのが私。だから言葉では伝えない。
「教えて?」
そう言って私は手塚の唇に指を這わせた。
軽く撫でて離れる。すると、手塚はクスッと笑って私の顔を持ち上げた。
「教えて、欲しいのか?」
「手塚に、教えて欲しい」
そう言うと近付いてくる手塚の顔。それに目を閉じる。
大好きだよ。そう心の中で呟きながら、私は手塚とキスを交わした。
「わかったか?」
息がかかる距離で聞かれ、私は手塚の首に手を回す。
「まだ、分からない」
そう言うと今度は長いキスをくれた。
手塚が教えてくれた恋の味。それは甘くて熱かった。