どり
□拍手小話
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◇ホワイトデー〜partner編〜
3月14日。いわゆるホワイトデーと呼ばれる日。
だけど特に何も変わることなく、部活がある。3年はもうすぐ卒業。それなのに相変わらず部活に参加しているメンバーがほほえましい。
そんなことを思いながら部活をする。
部活が終わる時間になった。片付けも終わり、着替える。
そしていつものように国光がいる部室へ向かう。
軽くノックをすると返事がある。それから入ると、それぞれにバレンタインデーのお返しを渡された。
「ありがとうございます!」
「市販品だけどね」
「それでも嬉しいですよ」
綺麗にラッピングされたお菓子詰めや小物をかばんに丁寧に入れる。
「そういえば、手塚から貰った?」
菊丸さんの質問に首を振る。
「え〜っ!?手塚あげてないの!?」
「……」
非難じみた視線に国光は無言でいる。それにクスクス笑うと、国光はため息をついてかばんの中から手の平におさまる小ささの何かを取り出した。
「こっちこい」
私に視線を向けて言うので、素直に従う。側に行くと私のかばんの中にそれを入れる。
「何?」
「知らん」
そう言って無言になる国光が不思議で、かばんの中からそれらしい物体を取り出す。
それは小さなグロスで、開けてみると薄く色付く程度の淡いピンク色のもの。
最初は呆気にとられた。けど、これをくれた理由が分かってしまい笑いを堪えきれなくなる。
「ありがとう」
肩を震わせながらお礼を言うと、少し拗ねた表情をしていた。
「何々?何をもらったの?」
「これです」
興味津々な表情でこっちを見ているメンバーに見せる。
「これって…」
「グロス?」
「そうですよ」
「なんでグロス?」
越前君の言葉に再び笑ってしまう。それを不思議そうに見ているメンバーに国光はいたたまれなくなったのか先に部室を出ていった。
それを見送りながら内心は嬉しくてしょうがない。
「手塚、どうしたの?」
「グロスをくれた理由に気付いて笑ったんですが、それがいたたまれなかっただけですよ」
未だにクスクス笑いながら説明する。
「理由って?」
「嫉妬、かな?」
越前君の疑問に疑問系で返す。
以前、侑にグロスを貰った。といっても、誰かに貰った物を私に回しただけなんだけど。
恋人に渡せばいいのに、と思ったけど、侑の恋人にそのグロスの色は合わない。だから、私に回ってきたんだけど…
それを知ってるのに、気に入らなかったみたい。
「ホント、可愛いんだから」
そんな所が愛しいと思いながら呟くと、周りは驚愕した。
「可愛いって…」
「似合わない単語ですけど、私にしたらどうしてもそう思っちゃうんです」
ニッコリと微笑む。持っていたグロスをもう一度見て、指でなぞる。
そしてポーチの中に大切にしまう。
「国光が待ってますので、お先に帰らせていただきますね」
ペコッと頭を下げて部室を出る。国光は部室から少し離れた所で待っていた。
私は国光の側まで駆け寄り、腕を絡める。
「おい」
「何?」
「腕」
「たまにはいいでしょう?」
ふわりと笑って言うと、国光は一瞬固まった。次に困った表情を浮かべる。
それを不思議に思っていると、掴まれてない手で頭を撫でてくる。そして軽く屈んで耳元で囁く。
「そんな表情するな。理性が持たなくなる」
その言葉に固まる。国光は固まった私の額にキスをしてきた。
外でその行為をされて真っ赤になる。慌てて離れると、クスッと笑いもう一度頭を撫で、帰り始めた。
その国光に少し遅れて私も帰る。国光の少し後ろから着いていくと、手を握られ隣にくるように引っ張られた。
そして手を握ったまま帰宅した。