どり

□拍手小話
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部室にて。

「ここらへんか?」
「んっ…そこより少し下…っ!」
「ここか」

的確に痛めた筋をマッサージしていく国光の手。痛みは少なくなっていってるが、それよりも首筋に触れる指の動きに声が漏れる。


「このくらいか…あとは冷却スプレーでもしておくか」

そう言って離れていく手にホッとする。

カチャカチャとした音が聞こえた後、冷たいものが首筋から肩にかけて吹き掛けられる。

「これでいいだろう。それにしても…」

語尾を濁す国光を睨む。こと後に続く言葉がわかったから、顔が赤くなりながらだけど。

「国光の手つきがいやらしいのがいけないんでしょう」
「俺は普通にしていたが?」
「なら、普通からそうなんじゃない?」

ジャージを着ながら会話する。というか、恥ずかしいので顔を見れない。

ファスナーを上げると、後ろに引き寄せられる。それにバランスを崩し、国光の腕の中に収まってしまった。

「いきなりなにっ…んっ…」

文句を言おうと顔をあげると、国光に口を塞がれた。軽く押し付けて離れるキス。

唇が離れてから再び睨む。だけど、全く意に介してない国光。

「今部活中よ?」
「あんな声だすおまえが悪い」

そう言ってもう一度キスをしてきた。今度はさっきよりも少し長いキス。


「はぁ…」

唇が離れて思わず息が漏れる。それに淡く微笑みながら唇を軽く撫でる国光に機嫌を直すしかなくなる。

私が国光のこの表情に弱いと知っているから、機嫌を直してほしいときは必ずこうなる。

「もう…」

国光から離れて向き直る。そして国光の頭に手を回し、軽く引き寄せて触れるだけのキスをする。

「ありがとう」

手当のお礼のキス。それに微かに笑みを深め、頭を撫でる国光に微笑む。


「そろそろ行こう」
「ああ」

さっきまでの雰囲気をこの会話で切り替え、走りにグランドへ向かった。
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