白い天球儀4

□2016良い夫婦の日
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診断メーカーで「いい夫婦チャレンジ」があったので方×水でやってみたところ「いっしょにいるだけで幸せな「いい夫婦」です」でした。゚+。(*′∇`)。+゚うんうん、13巻の2ショットですよね(笑)





*

「一緒に隠居したら君はどう変わるんだろうね」
日差しがある秋の昼下がり。四阿で同席して彼は何かの資料を、私は読みかけの草紙を捲っている。
「どう思う」
こちらに視線を寄越すでもない。
ぱらりと紙が擦れる音がした。
「余りにも陛下の為に心を砕いて身を粉にして働いている現状からいきなり引きこもったら、何日持つのかな。そもそも屋敷でのんびりはしていそうにないなぁ」
私がそう言うと視線を感じた。彼は本を膝に置いてゆっくりと手を伸ばしてくる。
「そう言う貴様はのんびりと好きなことをやりながら、裏で暗躍していそうだな」
垂らしている髪をつっと掬ってサラサラと流し出す。陛下がお妃様を愛でるように髪に口付ける訳ではない。指に絡めたり流したり、鋤いたりとあきもせずに手遊びをしているだけだ。
「酷いね。そんなに腹黒く見えるかい」
「腹黒い…とも違うな。貴様は昔からそんなもんだろう。私と違ってあらゆる情報に驚く程明るいしな。大人しくしているように見えてずっと動き回っていそうだ」
髪ばかりいじっている手を取り上げて頬へ導き、その平へほほを刷り寄せた。
「ふふふ、お互いにまだ隠居なんて早いようだね」
「当たり前だ」
「でも私は引きこもっていたいなぁ」
「私がそれを許すと思うか?」
呆れてため息をつく方淵に苦笑してしまう。
「そして私を引きずり出しにくるのかい?本当に君って私の屋敷を訪ねるのは平気だよね?」
「やましいことをしているわけではないのに咎められる筋合いはないであろう」
「あはははは、君らしいなぁ。実はてっきりお茶目当てになってるのかと思ってたよ」
「………」
「方淵?」
「それもあるな」
「……呆れた」
彼の手を解放すると再び膝の本を持ち上げて文字を追い出した。
「今更だろう」
「君らしいね」
じゃれあうような雰囲気はもうない。私は黒髪が掛かる綺麗な横顔から再び草紙へと目を戻した。
「訪ねていけば毎度招き入れる貴様も大概だ」
「そうかな」
「そうであろう。しかし互いに変わり者と言われているのだ、奇行の一つや二つ増えたところで今更だろう」
「そうだねぇ」

それっきり。
紙を捲る音だけが耳をかすめる。
どのくらい経ったろう。
遠くで方淵を呼ぶ声が聞こえた。
「さて」
彼は立ち上がって軽く背を伸ばしてからこちらを振り向いた。
「サボらせないからな、ほら行くぞ」と手を差しのべられたらもう逃げられない。
「仕方ないね」と笑いながら私はその手を取った。

end
20161122
良い夫婦の日
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