PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□壱――碧い瞳 3
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「リースさん!
もう休憩ですわね。
香茶を入れてきてくださいまし」


ローズは侍女に頼むでなく、前の指導教材を片付けているリースに勝ち誇ったように高圧的に命じた。
リースはリースで、本当はそんなことは職務内容に入っていないので聞く筋合いは無いのだが、王女の命とあらば叶えないわけにはいかない、と立ち上がり「しばしお待ちくださいませ」と言って部屋の奥へ消えていった。
その様子をローズは見下すように笑って見ていた。

そしてリースが注文通りの物を手に帰って来ると、さも今突然といった装いをしながら攻撃を仕掛けた。


「……私、今突然に果実水が飲みたくなりましたわ。
リースさん、入れ直してきてくださいません?」


口元に手を持っていき、クスりと露骨な笑みを浮かべた。
あまりにも隠そうとせず露骨な態度に、リースは一つ溜め息をつくとローズに向き直ってひらりと攻撃をかわした。


「ローズ様、無礼を承知で言わせていただきますが、そういう自己中心的な考えは御身の為になりません。
今回は入れ直して参りますが、次回からはこのような事は結してないようにお願いしておきます。
それでは失礼しました」
リースは微笑みながら完璧に一礼して香茶を入れ直しに再び奥の部屋へと消えた。

その表情は全く困ったという表情では無く、子どもを諭すような雰囲気で、今までとは全く違う反応にローズは少し戸惑った。


(く……。
今度こそは……!!)




――と、この様な攻防が暫く続いて行くうちに、ローズは自身の中で何かが変わり始めるのを感じていた。
今までの王女だからという理由で上辺だけ取り繕った関係ではなく、自分に本気で接してくれる。
そんなリースの態度が、ローズにとっては何よりも代え難いものであった。


そしてリースがローズの教育係りとして働き始めて一年たったある日だった。


「それではローズ様、政治学の御学……」


「リースさん!
その前にちょっとお話が……」


いきなり真剣な顔を見せたローズに少し疑問を抱いたリースだったが、微笑んで授業準備をしていた手を止めた。

一方のローズはと言うと、自分で呼び止めたにもかかわらず、どうしてよいか解らないのか冷や汗を流しながら、顔を赤紫色に染めていた。
その様子をみたリースはやれやれと一息付き、ローズに優しく語りかけた。


「どうなさいましたか?
ローズ様。
何でもお聞きいたしますよ」

リースの碧眼が優しい色を浮かべ、ローズの混乱している紅の瞳を捕らえた。

ローズはこの瞳を見て、心底心地よく感じた。

それだけで体が芯から暖かくなるような、そんな安心感が生まれた。

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