PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□壱――碧い瞳 1
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ユリガル国の王城であるサウス=サンスーシで、国王キーシュ・リーリフは幾度目かの深い溜め息をついていた。
自らの出した官板を見たという城下の者達がやってくるのだが、誰一人として自らの令にそぐう人材が見つからないのである。
その心中には諦めがそろそろ出始め、謁見にも身が入らなくなり始めていた。


――が、四十八人目の目通りを望む者を迎えたキーシュは破顔し、眉をひそめた。
いや、眉を動かしたのは彼一人では無かった。
その場にいたどんな人物もが、同様の反応を顕著にしていた。

それもそのはずで、皆が一様に視線を向ける先には一人の少女が膝を折ってひれ伏していたのだ。
それは、先程サイティスの官板の前に居た少女であった。
キーシュは戸惑いながらも面<おもて>を上げるように少女へ声をかけた。
少女はその言葉に従いゆっくりと頭を上げる。


――瞬間、言葉が詰まった。

頭を上げた少女は、どうみても十の歳にやっと行ったであろう様子であったのだ。
しかし、言葉が詰まった理由はそれだけでは無かった。
と、言うのは、少女の形容しがたい容姿もかなり目をひいたからである。

まだ少女だというのに端正な顔立ちをしているのだ。

すっと通った鼻梁は嫌みになく高く、その下にある唇は赤くみずみずしく、形よく閉じられている。
両の瞳は澄んだ碧で、彼女の意志の強さを表しているかのように煌めき輝く。

そして何といっても目を引く神々しいまでの金の髪は、首の位置で一つにくくられている。
それらのパーツすべてがバランスよく配置されていて、彼の美の女神が舞い降りてきたかの様な錯覚に陥らされた。


そんな美しいまでもの容姿を持った微笑む少女を、キーシュは髪の一本まで隙のない人物だと評価していた。




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