PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□T〜始まりの陰謀〜序章
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女――母親は首を横に振ると自らの手布――ハンカチのようなもの――を取り出し、自らの眦からこぼれていた涙を掬った。
白い手布には龍が五ぼう星を取り巻いている紋章が付いていた。
母親はその紋章を握り締めるとしっかりと少女を見つめ、真剣な表情で言葉を紡いだ。


『我がユリスル王国ユリスル王――あなたの父上は気高く聡明な御方。
近い将来我が国が滅ぶ事を予見し、貴女だけはどうにか助けようとお考えなのです。
そして貴女の力は貴女が信頼した国の為に使って欲しいと思っていらっしゃいます。

――でも、お願いだから……国にだけは……!』


母親は目に涙をいっぱい溜め、訴えかけた。

しかし、すでに耐えきれなかったのか少女は規則的で穏やかな寝息をたて、寝入ってしまっていた。
母親はしばらくそのまま少女の寝顔を愛おしそうに見ていた。
人工的な光源の無い中で穏やかに見事な円を描いている月の光だけが静かに二人を照らしていた。



どれほどたったか、月の光を背にしばらく少女の寝顔を見つめていた母親だったが、寝台の傍の椅子――今まで自分が座っていた――から立ち上がり、幾度目か少女の頭を撫でて優しく声をかけた。


『お休み、リース。
貴方に良い夢を……』



母親が出て行った後の部屋は少女の規則正しい寝息の他は静寂に満ちていた。



――この日から半年後にユリスルは攻め入られ、国としての終焉を迎えたのであった。

王女リース・アークバル、九歳の時であった。







あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。自分で読んでて拙さに涙が出てきそうです。この話は花神が小学生の時に書いていた話なので、色々ヤバい所はありますが、良ければお付き合い願います。
何かありましたらご連絡下さい。

2007/09/01 花神美咲
修正:2008/01/19
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