PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□参――コーネル 2
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キーシュはセスナが軍事関係者であるリースを遠ざけるように求めてくることは既に想定していた為、直ぐに了承した。


「それは構いませんが、その間この者はどうしていれば良いかな」


「…そうですな。
ああ、この城の中を自由に見学して貰いましょう。
我が国は宗教にとても精通した国です。
その分退屈するようなことはないでしょう。
特に静浄の泉などは他国からの賓客などからも大変喜ばれているし」


セスナはその丸く顎の弛んだ顔で嫌らしく笑んだ。


「しかし、他国の者――しかも軍人に城内を勝手に歩かせてもよろしいのですか?」


イザードはあまりに突拍子もないセスナの提案に思わず聞き返した。
まさか敵国の一将に城内を歩かせる許可を出すとは、イザードにしてみれば酷く考え難く理解し難いものだった。

しかしセスナは気にも留めていないといった様子でイザードに返した。


「大丈夫ですよ、イザード殿。
我が国は他国に知られている通り、世界でも有数の軍隊を保持する国家です。
よって軍事に関しては最強を自負しています。
少しでも怪しい素振りを見せたら容赦はしませんよ」


はははとリースを、ひいてはユリガルを馬鹿にしているとしか思えない体で笑うセスナにリースは苛立ちを覚えた。


(私をなめているってわけか)


リースは腑<はらわた>が煮えくりかえっている内心とは裏腹ににっこりと最高の微笑をその顔に浮かべ、セスナに礼を述べた。


「ありがとうございます。
それではお言葉に甘え、私は大人しく見学をさせていただきます。
願ってもない事に、私はコーネル国の宗教には、前々から興味を持っていまして……。
この機会に有りがたく学ばさせていただきます」


セスナはそう恭しくいうリースに満足そうに三度<みたび>笑いリースの方を向いた。


「それはそれは。
双方良い偶然が重なったことですな。
しっかりと学ばれるように。

――さて、皆の者も下がれ」


セスナの言葉にコーネル国側の護衛やメイド、秘書達は応接室を後にし始めた。
リースも「それではまた後程」とキーシュに目配せし、キーシュが頷いたのを確認すると自らもコーネル国の者達の退出する波に乗り、部屋を後にした。

その後ろ姿にはイザードの視線が刺さっていた。



****
部屋を出るとリースはセスナの秘書であろう女性の肩に触れ呼び止めると、静浄泉への行き方を尋ねた。

その女性から教えられた通りに足を運ぶリースは胸中で毒づいていた。


(私に城内を歩かせたことを後悔することだ。

必ず掴んでやる)



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