PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□参――コーネル 1
1ページ/3ページ


「それではレイディン、後は任せたぞ」


キーシュは全ての用意を済ませ、既に乗り込むだけとなった馬車に乗り込みながら、宰相にそう声をかけた。
レイディンは恭しく一度頭<こうべ>を垂れ、今から敵地へとその御足を踏み入れようとしている主に向かって言葉を発した。


「陛下の御身無事に、一日も早くのご帰還を臣下一同、心よりお待ち申しております」


そう奏上したレイディンは、次いでキーシュの後ろに控えていたリースを見ると、重々しく顔つきで声を発した。


「マリーク、陛下に危害が加わらぬよう細心の注意を払い行動するように」


「かしこまりまして。
陛下も王子も、私が身命をうってお守りいたします」


リースは心配そうな表情の抜けない宰相に向かって力強く敬礼した。
レイディンも力強く頷き、リース達が馬車に乗り込んだのを確認すると従者に発車するように命じた。

ローズは宰相の隣で、コーネル国へと向かう馬車を見つめながら胸の前で交差した手を握り締めながら念を込めた。


(父上、兄上、リースの旅路に幸多からんことを……)





****

「陛下、もう一度確認させて頂きますが、決して御身を疎かになさらないように。
如何なる危険が有ろうと、私が陛下もイザード様もお守りいたします。
よろしいですね?」


リースは厳しい口調で、むかいの座席に腰を落ち着けているキーシュにむかって言い放った。
キーシュは、国を出てから一体何度目かというリースの言葉にいい加減苦笑したい気持ちであったが、実際に何が起こるかわからない国へと赴くのだから、気を引き締めなければならないと感じているので、その発言を止めようとはしなかった。

まして今回の訪問は
『非公式に行いたい』
というコーネル国側の意向により、只でさえこちらから赴く人の数は少ない。
そして出発前にはあの様な事件が起きた。
更に自分は何事か起こった場合には命を賭す考えを持っている。

そんなわけで、リースが過敏に反応するのも仕方が無いのだとキーシュは胸中でそう呟いた。


――が、そう何度も言われれば人というものはうんざりするもので、十五回目の発言の後にキーシュは遂に切り出した。


「リース、そう何度も繰り返さずともいい加減わかった。


……それに、着いたようだぞ。
コーネル国に」


リースとイザード、キーシュは外に目をやった。
そこにはコーネル国の王城であるゼブリス城がリース達を見下すようにその場にそびえていた。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ