PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□弐――嵐到来 4
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「……ディートリッヒ・シャトルが殉死しました。
これは、ただ事ではございませんから」


「そうか。
ディートリッヒが……」


リースの沈んだ報告にキーシュは幾分か疲れのみえる顔を陰らせうつむき息を継いだ。

悲しみに沈む重苦しい空気が続いたが、キーシュは暫くして顔を上げるとリースへと口を開いた。


「先程の続きだが、私はコレをゆゆしき事態だとみている。
それは先程の事件を見て確信へと変わった。
あのずる賢いが一人では何も出来ないコーネル王にあのような真似は出来まい……。
きっと裏で何かが動いているはずだ」


キーシュは椅子から立ち上がり、机の側から離れるとリースの前に進み出た。


「そこで私はコーネル国へ行く。
行って事の全てを見極めたい。
その権利も義務も、私には有る。

よって系統番号二○一、近衛隊長リース・ブラウンシュヴァイク、右を王女ローズ・リーリフの身辺警護の任を一時解き、我キーシュ・リーリフの身辺警護の任に当たることを命じる」


キーシュは王としての態度でリースに勅命を下した。
リースも一度瞳を閉じ、その場に膝をつき了承した。


「かしこまりまして。
このリース・ブラウンシュヴァイク、全身全霊をもってキーシュ様の身辺警護を勤めさせていただきます」


「宜しく頼む」


キーシュは頷きリースに立つように命じた。




――そこへ、


「お父様はいらっしゃいまして!?」


嵐の様にやって来たそれは、中を確かめずに勢いよく扉を開け放つと、ズカズカと部屋へと侵入してきた。

その後ろにはうんざりした顔の青年と、騒ぎの元凶に引っ張られてきたのであろう美麗な青年が立っていた。


「ローズ……。
それにイザードにフィルスも」


キーシュはその様子を見てうんざりとした表情で深い息をついた。
正確に何があったかは分からなかったが、大体の事は検討がついた。
もう息をつくしかないだろう。

先頭に立っていた少女はよほど急いで来たのか、息を切らしていた。


「……」


それを見たリースは一つ苦笑し、未だ呼吸の整っていない少女――ローズへと歩み寄り肩を抱いた。


「大丈夫ですか?
ローズ様」


ローズはまだ肩を上下させていたが、リースの声を認めると顔をあげた。
そしてリースが着用しているものに目をやり、悲哀な感情の籠もった息を吐いた。


「本当に近衛隊長だったんだ……」


首をかくっと下にもたげ、ローズは再び息をついた。
今一状況が把握出来ないキーシュとリースはイザードに視線をやった。

イザードも一つ息をはき状況を説明し始めた。


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