PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□弐――嵐到来 2
1ページ/3ページ

――王執務室前



「系統番号二○一、近衛隊長リース・ブラウンシュヴァイクです」


リースはノックをした後にはっきりと高らかな声で発した。


「入ってくれ」


すぐに室内からいつもより少し固いキーシュの声が聞こえた。
リースは部屋の扉の両端に直立するディートリッヒと近衛兵に目配せし、「失礼します」と言って執務室へと足を踏み入れた。

入ってみると中央に配置された大きな実務机に肘を付き、何やら考え込んでいるキーシュが見て取れた。


「陛下、私に用があるとお聞きいたしましたが、どういったご用件で御座いましょう」


リースは義務的にそう問いかけた後、確信を持った面もちで更に発した。


「……コーネル国のこと……ですか?」


キーシュはふっと笑い、一つ息を吐いた。


「やはりリース、いや“マリーク”にはかなわない、といった所か」


茶化すようにキーシュは一度苦笑するが、直ぐに顔を硬くさせた。
それに比例し、リースも目を鋭く細めた。


「その通り、コーネル国の事だ。

……リースには悪いが」


ちらりとキーシュはリースの顔を窺ったが、リースは微動だにしなかった。
色の変化は見て取れない。


「それは構いません。
私は気にいたしません。

私は陛下から名を賜った、“ブラウンシュヴァイク”近衛隊長ですから」


僅かに笑みも見せ、内心のざわめきを上手くオブラートに包んでいるが、キーシュは内心の機微を敏感に感じ取り、複雑な思いを胸にくすぶらせた。


「……そうか」


身の内に微妙な波紋は残るものの、話を本題へと移すべくキーシュは身を乗り出した。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ