PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜
□弐――嵐到来 2
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――王執務室前
「系統番号二○一、近衛隊長リース・ブラウンシュヴァイクです」
リースはノックをした後にはっきりと高らかな声で発した。
「入ってくれ」
すぐに室内からいつもより少し固いキーシュの声が聞こえた。
リースは部屋の扉の両端に直立するディートリッヒと近衛兵に目配せし、「失礼します」と言って執務室へと足を踏み入れた。
入ってみると中央に配置された大きな実務机に肘を付き、何やら考え込んでいるキーシュが見て取れた。
「陛下、私に用があるとお聞きいたしましたが、どういったご用件で御座いましょう」
リースは義務的にそう問いかけた後、確信を持った面もちで更に発した。
「……コーネル国のこと……ですか?」
キーシュはふっと笑い、一つ息を吐いた。
「やはりリース、いや“マリーク”にはかなわない、といった所か」
茶化すようにキーシュは一度苦笑するが、直ぐに顔を硬くさせた。
それに比例し、リースも目を鋭く細めた。
「その通り、コーネル国の事だ。
……リースには悪いが」
ちらりとキーシュはリースの顔を窺ったが、リースは微動だにしなかった。
色の変化は見て取れない。
「それは構いません。
私は気にいたしません。
私は陛下から名を賜った、“ブラウンシュヴァイク”近衛隊長ですから」
僅かに笑みも見せ、内心のざわめきを上手くオブラートに包んでいるが、キーシュは内心の機微を敏感に感じ取り、複雑な思いを胸にくすぶらせた。
「……そうか」
身の内に微妙な波紋は残るものの、話を本題へと移すべくキーシュは身を乗り出した。
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