PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜
□弐――嵐到来 1
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――サウス=サンスーシ内 応接室
「お初にお目にかかります、コーネル国外交長アルカナ様。
私は第一王女、ローズと申します」
ローズは豪奢なドレスに身を包み、父であるユリガル王の賓客に最高の礼と儀をもって応対していた。
――表面上では素晴らしく好意的な笑みをもって。
「おお、これは王女様でいらっしゃいましたか。
あまりにも美しいので、天女でも舞い降りてきたのかと勘違いをしましたよ」
コーネル国の外交長――アルカナは、わははと濁声で笑いそばにあった香茶のカップに口をつけた。
しかしそれは一国の外交官としての態度としては相応しくない態度であり、それを見たキーシュはアルカナにバレないように密かに一つ溜め息をついた。
一方ローズはローズで、あまりにも歯の浮くような科白に内心げんなりといった感だが、それはおくびにも出さずにもう一度笑んだ。
「まぁ、お上手でいらっしゃられて。
……では、積もる話も御座いましょうから、私はこの辺で失礼致します。
どうぞごゆるりと」
そう言うとローズは綺麗に一礼して上品に扉を開閉し、退出した。
「けっ、禿げのクソじじいが。
歯の浮くようなお世辞ばかり言いやがって」
ローズは退出するや否や、嫌悪感に顔を歪め愚痴を零し始めた。
その様子に扉付近で待機している使用人達からは密かな笑いがおこる。
そんな様子からもこの国ではこれが一般的なものであることが推し量られた。
「ローズ。
ちゃーんとご挨拶出来たじゃない。
裏を見せずに」
いきなり頭上から降りてきた声に驚いた様子もなく、ローズは肩をすくめた。
他の使用人達も慌てることなくその声の主へと軽く一礼している。
「私の教育係りがとーっても厳しいからね。
リース」
ローズはわざと溜め息を吐き、階段を下ってくる声の主を振り返った。
「あら、それでは私の努力のタマモノですね。
頑張った甲斐がありました」
そこには美しいまでの金髪に二つの碧眼をもったかなりの――それこそ天女の様な――美女が立ち、クスクスと笑っていた。
ローズはイヤミも効かないとわかるとあからさまな溜め息を一つついて苦笑いした。
「本当にリースにはかなわないわね」
その言葉を契機に二人は再び笑いあった。
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