PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜
□壱――碧い瞳 3
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ユリガル国王女であるローズ・リーリフは、新しい教育者が来ると聞き、良からぬ事を考えていた。
自分を教えに来た人物、言わば教師にワガママを言い振り回す。
王女という堅苦しい身分に在るローズにとって、その行為は今一番の楽しみであるのだ。
(今度はどうやって追い出してあげようかしら。
前回のは骨無しだったから今回は少しはやれる人が良いわね。
ふふふ、腕がなるわ)
内心ほくそ笑みながら面会の場所に向かったローズだったが、扉を開いた瞬間フリーズした。
(な、に……!?)
驚いて未だに固まっているローズに向かって元凶であるリースはニコリと微笑んだ。
その微笑を見た途端、ローズの頭の中で何か切れる音がした。
一気に血が上ったのか、顔は真紅である。
「何なの、この人は!?
お父様、説明してくださいまし!!」
キーシュは、ははっと乾いた笑いをするとローズを椅子に導き、これまでの流れをローズへザッと説明した。
***
「……と、いうわけでこの子が今日からお前の教育係りだ。
わかったな?」
それだけ言うとキーシュは微笑んで、面倒はごめんだとでも言うようにそそくさと部屋を後にした。
「ち、ちょっとお父様!?」
ローズの叫びも虚しくキーシュの姿は外へと消え、部屋に居るのはローズとリースのみとなった。
未だに扉の方を呆然と見つめているローズにリースは近づき、手を差し出した。
「お初にお目にかかります、王女ローズ様。
私はリース・ブラウンシュヴァイクと申します。
以後ローズ様の教育係として勤めさせていただきますのでどうぞよろし……」
リースが言い終わる前にローズは自身の美しい顔を歪め、リースの言葉を遮った。
そして紅い瞳を更に紅くして言い放った。
「私は絶対認めませんから!!」
怒りを隠そうともしない王女は、そのまま美しい銀の髪を翻して部屋を後にした。
「……」
残ったリースはローズの行動に少しの間呆気にとられていたがすぐに自身を取り戻し、その碧い瞳を穏やかに光らせ、リースが出て行った扉を見つめた。
「これはやりがいがありそうね」
そう言いニヤリと笑うと立ち上がり、自らもその部屋を後にした。
――こうしてローズとリースの、後を形成する大事な闘争期間が幕を上げたのであった。
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